2010/02/27

エクスパットの割り切りポリシー

外資エクスパットは、日本での担当するはずの事業の具体的な内容や、どんな社員がどんな仕事をやっているのか、ということをよく知らないまま着任してくるのが普通である。

日本語ができないのはまずあるにしても、そもそも日本にいてずっとその業界にいる日本人に比べて、ある種の知識・情報量において劣るのは当然である。にもかかわらず、多くのエクスパットがかなりの存在感を示し、彼らなりに短期間にそれなりの足跡を残していく。

また、ランクの高いエクスパットほど前任者からの引き継ぎのようなものはほとんど行わない。引き継ぎと称して1時間雑談して終わり、というようなことも少なくない。

こうして外資のエクスパット達が

1.日本事情に疎いまま 2.引き継ぎを行わず 3.短期間に存在を示す

ため、本人の限られた理解(="思い込み")に基づき、ときに強引とも言える手法で軌道修正を行うことにはなるのだが、そこには常にある種の、多くのエクスパット達に共通した考え方があるように思われる。

例えば、ベルギー人エクスパットのJは、しばしば次のようなコメントを口にした。ほとんどのエクスパットに共通する「仕事上のやり方」についてのポリシーを代表するものとして紹介したい。



「詳細には間違っているが、方向性において正しい」

原文; "Directionally right, precisely wrong"




所詮、エクスパットが実務の詳細を知りコメントするのはどだい無理であり、しかも役員としての観点からは、どれだけうまく自分が新たに示すオリジナルな方向性を元に現地社員に詳細な実務をさせるのかにポイントが集約される。

だから、エクスパットとしては、少々細かい不都合があろうが方向性があっていれば、仕事としてはそれで良い、というように割り切っている、ということだ。

ところでこのポリシーには、仕事以外の処世術にも通じる部分がある。

就職、結婚など世の中は詳細に検討できないことだらけだが、そういう時こそ、エクスパットのように

「詳細には間違っているが、方向性において正しい」

と思えることができれば、それで良いのではないか。




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2010/02/25

モロッコ; ヒコーキの替わりにタクシーに乗る(その1)

こうして僕らは、予定外にグラン・タクシーに乗ってフェズからタンジェに向けて旅することになった。

運転席; 数日前に口論した"あの"運転手
助手席; ティーンエイジャーに見える女の子
後部; メグミ、僕


のように灰色のベンツに乗り込み、フェズ空港を出発。

当然、僕は少なからず緊張していた。

(彼は僕らを覚えているだろうか? )

数日前の経緯を不快に覚えているのは当然として、僕らが同じ客であることがわかるだろうか? 

運転手から見たら東洋人などみんな同じに見え、区別がつかないことを祈った。

もっとも、フェズ滞在中に僕らは他の東洋人にほとんど出くわさなかったような気もする。

そして、助手席のティーンエイジャーの女の子。

走り出すや否や、女の子と運転手は仲良く現地語で会話を始めた。女の子はいきいきとしゃべり続け、運転手も愛想よく返事を返している。

(運転手は少なくとも彼女をタンジェに届けるのには違いない・・・・)

しかしそうこうするうちに突然、タクシーはメインストリートから細い道にに折れて入った。

(遠くタンジェに行くのに、なぜほとんど走らないうちにこんな路地に入るのか?)

周りは、どうみても下町としかいいようのない庶民的な街といった感じだ。

タクシーはもう一度道を曲がって薄暗い路地裏に突っ込み、そして運転手はエンジンを完全に停止させた。

つづく




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2010/02/23

「問題ない」でも「生き残れる」でもない

あるとき、英国人エクスパットのEさんから、僕が作成してその上で彼自身がかなりアレンジしたプレゼン資料の確認を求められたことがある。

その翌日、エクスパットEはその資料を使って、本社からのエラいビジターにプレゼンをする予定だったのだ。

さて
資料を確認した僕は、エクスパットEがある認識間違いをしていることに気付き、彼の部屋を訪問しその点を懸念点として説明した。

すると、その内容を一通り聞いた上で、英国人エクスパットEは僕に対してこう答えた。

「ありがとう。でも、私はそれを伏せておくことができる。」

(原文 "Thank you. But I can sit on it.")


エクスパットEは、僕の指摘した問題は、プレゼン資料の修正を必要とするほどの重要な問題ではないと判断した上で、それを僕に伝えながら、かつそれでも僕に対してきちんと感謝を述べるという極めて高度なことを一文でやってのけたのだった。

通常、この場面で一番使用される可能性の高い英語のフレーズはおそらく、

「問題ない」 "No Problem"

であろう。しかし、確認を依頼した相手である僕が問題だと指摘しているのに対して、「問題ない」と答えるのはどうしても偉そうに却下している感じになる。

また、ちょっと冗談めかして

「生き残れる」 "I can survive"

というのも、よく聞くフレーズだがこの場面で使うと追加の資料修正が面倒だから手抜きをしているようにしか聞こえない。

エクスパットEは英語のネイティブだから当然、と言ってしまえばそれまでだが、「問題ない」でもなく、「生き残れる」でもなく、「伏せておくことができる」というフレーズを使われたことで、その日、僕はエクスパットEの僕に対する配慮を痛く感じたのだった。



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2010/02/21

フェズ; ヒコーキの振替輸送はタクシー!?

ヒコーキの一機もいないフェズ空港の待合室で、暇つぶしをしていると、係員がやってきて名前を呼ばれた。

「キミには選択肢が二つあり、そのどちらかを選ぶことができる。

 まず、一つ目。カサ・ブランカ行きの本日午後のヒコーキは、22時出発だ。

 もちろん、キミはそのヒコーキに乗ることができる。

 それとも、これからタンジェへタクシーを出すので、そのタクシーに乗ることもできる。」


確かに、フェズから陸上を北上するとタンジェに到達する。このルートにはバスが走っており確かバスで6時間の行程である。

ヒコーキでカサ・ブランカを経由して行くよりも距離的に近いのはわかるが、これってつまり、

『ヒコーキが出ないので振替輸送としてタクシーで行かせてやるが、どうだ?』

という提案を受けているわけで、日本人的にはかなりあり得ない、予想もしないシナリオである。

が、朝の6時にチェックインして、そのまま22時までほとんど何もない待合室にいるのはとても耐えられそうもない。

一も二もなく、僕らはタクシーを選択した。

そして、念のため、空港係員に頼みこみ、手元のチケットの裏側に

『ヒコーキがないので、タクシーでタンジェに行くこととなった』

と説明文を書かせた上、ロイヤル・モロッコ航空のスタンプを押させた。

これで、日本に帰ってから旅行会社に文句の一つも言えるかもしれない、と思いつつ紙を受けとる。



フェズからタンジェへのヒコーキの振替輸送タクシーというオプションを選択したのは、僕らとモロッコ人らしい若い女性が一人だけだった。

われわれ3人の振替輸送組は取り返した荷物を運びながら、係員に先導されてタクシー乗り場へ。

そして、待っていたグラン・タクシーのドアを開けて待っていたのは、見覚えのあるドライバー。

フェズ到着初日に僕らが空港から新市街まで白人青年と同乗したときに、料金の支払い基準で揉めた末に、捨てセリフを吐いて去って行った、あのときのタクシー・ドライバーだった・・・。

フェズ・タクシー料金の支払い基準で口論する

つづく




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2010/02/19

日米カルチャー・ギャップを抜きとるウマい商売!?

日本人に通用して、外国人に通用しないと思われる理屈の一つに、「組織内の情報共有」みたいなものがあると思う。

例えば、一つの日本の会社から二種類のサービスを、別契約で別の担当者(仮にAAA, BBBと呼ぶ)から受けているときに、AAAの担当者に対して、

「同じ会社なんですから、BBBの人と情報共有してくださいよ~」

というと大抵は、

「あっ、そうですよねぇ~。

 ウチのBBBですよね。

 はい、担当者を知ってますので確認します。」


というような展開を見せる。

もちろん内容によりけりで上手に断られることもあるが、少なくともこうした場面で、

「BBBは確かに同じ会社ですが、AAAの我々とは無関係です。」

などと、あからさまに拒否されることはまずない。

日本社会においては、一人前の社会人なら、たとえその担当者を直接知らなくても少なくとも社外の人に対しては、その社内担当者の名前を呼び捨てしたりして、ウチとソトの区別をしっかりつけるのが普通だ。

これを前提に、相手が多国籍企業の日本人担当者だと面白いことがおきる。例えばこんな例。



「このシステム、どうも使い勝手が悪いんですよねぇ~。ほら、こんな感じ。」

システム屋

「ああ、そうですね。これは使いにくいですね。」

僕(ちょっと声色を変えて)

「そういえばこのシステム、御社のアメリカに開発してもらったみたいなんですけどねぇ~。」

システム屋(急に焦りだして)

「えっ!! あっ・・・。

 す、すみません。全くウチのアメリカがこんな・・・

 これはダメですよねぇ~・・・ホントに申し訳ありません。。。」


この日本人のシステム屋は一旦、システムがイマイチであることに完全に同意してしまっているので、今更いいわけもできず、わずか1分前には第三者だったはずのシステムが急に「ウチのもの」に置き換わったことで、全く関係なかったはずのシステムの不具合に対して謝ることになっている。

ほとんどイジメてるような感じだが、こういうネタは相手の日本人が責任感が強いほどよく効く。

逆にこういうロジックは、外国人にはほとんど全く通用しない。


この微妙なカルチャー・ギャップを利用して、何かをウマくやる商売はないだろうか?

同一の日本企業に複数の仕事を委託し、このネタで余分な作業をタダでやらせた上で、海外に対して包括して高く請求するような、そういう差額を抜き取るようなウマい商売・・・。

ないかなぁ・・・。



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2010/02/17

フェズ; ヒコーキはない!?

チェックインした乗客の誰からも既に明らかにわかっていたこと・・・今はフェズ空港には一機もヒコーキはなく、新しくヒコーキがどこかから到着するまでは、誰もどこへも出発できるはずがない、ということ。

AM7:30頃。

つまり定刻を30分も過ぎてようやく係員が待合室の真ん中に立ち、早口のフランス語でまくしたてるように説明を始めた。

しかし、とたんに数人の女性客が立ち上がり、

「ピュッターン!!」

の4文字語を叫びながら、一気にくるくる、まくし立て始めた。

あまりに早すぎて何を言っているのかまったくわからないが、ヒコーキが飛ばないのにキレているのは誰が見てもはっきりわかる。

約10分後、一通り、女性客の騒動が静まったところで係員をつかまえて問いただしてみた。

「この後、どうなるの?」

「ムッシュのトランジット便である、カサ・ブランカ->タンジェも含めて、午後の便がある。

 全くノープロブレムだ。」


「じゃあ、その午後の便っていうのは、一体何時出発なんだ?」

すると、係員氏は

「それは・・・・・・後で言う!!」

と言うが早いがあっという間に、係員の部屋に逃げるように入って隠れてしまった。

頼むぜ、ロイヤル・モロッコ航空。

つづく




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2010/02/15

動物のカテゴリと「殺めてはいけないもの」

なぜ人を殺してはいけないのか、という質問に答えるのはなかなか難しいことと思うのだが、にもかかわらずおそらく現代では、世界中で、とにかく「人を殺めてはいけない」というルールがあるに違いない。
 
ところが、人以外の動物について、人は「何を」殺してはいけないのか、についてのルールはおそらく一様ではない。これは食い物に深く関係するからだろう。

#1もともと、キリスト教徒は肉を食う。

つまり、理屈としては自分は直接手を下さなくてもコミュニティーの誰かが動物、それも哺乳類を殺していることになる。

きっと、キリスト教においては、人間と、他の動物とは違う明確な区別がどうしても必要だったのだ。

人は殺してはいけないが、動物は食べて良いのだから。


#2 他方、インドのジャイナ教徒には靴をはかない人がかなりいるらしい。それも、靴を履くと小さな虫などを踏んで殺してしまうから、という理由による。

つまり、ジャイナ教では、人を殺してはいけないというルールが、人間から始まって哺乳類はおろか虫ケラに至るまで、断絶なく続いていることになる。



以前に、進化論を信じないアメリカ人との会話  という経験談を書いた。

仮に、キリスト教会が進化論とその意味するところを完全に認めてしまった場合、上記のような人と動物との明確な区分を失い、「人を殺めてはいけない」という自明な倫理に対する明確な論拠を失ってしまう危険があるのではないだろうか?



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2010/02/13

フェズ; ヒコーキが一機も見えない空港

早朝にもかかわらず、フェズ空港の出口の前には、相当大人数の出迎え(?)としか言いようのない見物人たちが多数ずらーと柵越しに並び、ごく一部の赤や青、ピンクのジュラバの人々がより空港内に入ろうとして警備員に押さえられている。

この見物人たちはいったい何をしているのだろう?

チェックインはごく簡単に終了。相当多数の見物人に対して、乗客は10から20人程度しかいないように思われた。

そして、平屋の空港建物から地平線の広がる空港には、"Saudia"という緑のサウジアラビア国旗のついたジャンボが一機のみ停まっている。

予約はモロッコ航空のはずだが一機しかないところを見ると、あれに乗るのか?

AM7:10。

アナウンスのないまま、出発時刻を10分過ぎた頃、空港に一機のみ見える"Saudia"の飛行機は動き出し、なんと一人の乗客も乗せることなく飛び立っていった。

こうして、フェズ空港にはカサ・ブランカ行きにチェック・インした乗客約20人が残され、空港建物から見る滑走路には何の障害物もなく、その向こうに続く緑の野原がずーっと見える。

そして、飛行機は一機もいないのに乗客の荷物を積んでいると思しき荷物カートを引くトラクターが走っていた。

一体、カートはどこに向かって荷物を運んでいるのだ?




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2010/02/11

統計的ユニバーサル健康法

世の中には、いろいろな健康法があり、図書館などに行くと本当にいろいろな本がある。

これらはいわゆる「医学書」でないので、本当にいろいろな見解があり、さまざまな人が種々の見地から、このようにすべし、というようなことが書いてある。

いわく

・体のゆがみが直るようなストレッチが必要、とか

・体が冷えると、さまざまな悪さをする、とか

・肉と脂を食べすぎず、もっと穀物を食え、とか

などなど。

どの健康本ももっともらしいことが書いてあるのだが、いつも疑問に思うことがある。

それは、こうした健康法の本においてはほとんど例外なく、

あまり具体的な作用根拠を示すことなく、独自の用語等を使いながら、

「XXXX をすると、YYYYYというようになるので XXXXをすべし」

などと、あたかも体の中の構造とその作用が断定的に説明されることである。

その上で、わずか数例の治療例などが載せられていたりする。

こうした記述はその統計手法に疑問があり、効果の検証が怪しいと言わざるを得ないが、といって、こうした内容のすべてが荒唐無稽で健康効果が全くない、とまでは思わない。

本当は、個別の健康法には、根拠・作用方法の説明優劣にかかわらず、多少なりと効果がある部分と、本当は意味がない部分とが、混ざっているのに違いない。

となるとブレークスルーは、これらの根拠不明確な方法に対してどのように統計的な検証を入れるかということになる。

そこで思いついたこと。


・インドや中国などの伝統医学も含めて、多少なりと効くとされる健康法を多数集める

・一切の根拠や説明を無視して、健康にプラスとされる日常習慣のアクションのみをリストアップ

・根拠説明は異なっても、アクション自体は一致するものがそれなりに出る(おそらく)

・複数の健康法で一定以上重複する具体的なアクションのみを機械的に採用し、元となる健康法リストと、この採用方式自体を根拠とする。



名付けて、「統計的ユニバーサル健康法」とでもいうべきか。

まさに他人のふんどしで相撲を取るgoogle時代にふさわしい手法だ。

ぜひ誰かにやってもらい、Webに結果を公表してもらいたいものである。



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2010/02/09

フェズ; 大きなタクシーと小さなタクシー

一般的にフェズからタンジェまで、という移動にはヒコーキには乗らない。

距離も近いし、しかも直行便はない。

が、時間節約のために僕はフェズ-> カサ・ブランカ-> タンジェ という乗り継ぎを予約していた。

朝5:00に起きて、ホテルから飛び出しフェズ空港に向かうことにした。

早朝のフェズ新市街は結構寒く、しかも人がまばらで不気味だった。

タクシーを探してしばらく歩くと交差点の角に赤いプジョーの小型タクシーが停車しているのを発見!!

「空港に行きたい。空港につれてってくれ。」

とタクシー運転手のおじいさんに言うと、予想外の回答が返ってきた。

「これはプチ・タクシーだから、空港には行かれない。」

「はぁ???」

フランス語のかみ合わない会話をして、おじいさんの言うことを整理するとこういうことだった。

タクシーには二種類のタクシーがあって、プチ・タクシーとグラン・タクシーという区分がある。

おじいさんの赤いタクシーはプチ・タクシーであるので、空港のような遠方に行くことはできない。


「じゃあ、どうすれば空港に行けるんだ?」

「10DHで、オレがグラン・タクシー乗り場に連れて行ってやる。」

「わかった。グラン・タクシーのいるところに連れてってくれ。」

なんだか昔話みたいだ。

大きなタクシーと小さなタクシーがあるなかで、慎ましくも小さい方を選んだのに、イマイチいいことがない。




おじいさんの赤いプチ・タクシーで、到着したのはただの空き地にしか見えなかった。

空き地に、洗車するとクリーム色になるのではないかと思われるようなグレーのベンツが、狭い丘のような空き地に折り重なるように停まっていた。

確かにグラン・タクシーらしきベンツはあるが、オフィスのようなものは見当たらない。

(誰もいないじゃないか!?)

もしかしてこれでは、これでは空港に行けないのではないかという不安を感じつつ、気合いを入れて叫んでみた。

「タ、タクシー!!」

すると、目の前のタクシーの後部座席からむくむくと人影が起き上がり、毛布をかぶった運転手が中から現れた。

空港まで120DH。

どうやらこれは、舌切雀ではなかったようだ。

僕は「大は小を兼ねる」という言葉を思い出しながら、まばらに木が生えた野原という、空港までの道のりを東の空が白む中で車窓に見たのだった。




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2010/02/07

"U"と"ネズミ車"

あるとき、スコットランド人のエクスパットであるRがやってきて、僕に対して仕事の進め方についてこんな話を始めた。

「特に、グローバル・チームと仕事をするときには、仕事の進捗についてよく気を配るのが大事なんだ。」

「うん。どんなことをするんだ?」

「グローバル・チームの人間は、われわれ日本にいるチームをすぐに"U"に入れる。」

「"U"って何さ?」

「アルファベットの"U"だよ。こんな形をしている。」

そう言って、エクスパットRは近くにあったホワイトボードに大きく"U"と書いた。

「うん。アルファベットの"U"ね。それで?」

「例えば、今、お前は"U"という形をした谷の底にいるとする。

 努力をして、前進していくとだんだんカーブが直角になってきて、そして "U"字の谷の底にずり落ちることになる。」


「なるほど」

「そして、"U"の底はお前がもともといた場所だ。つまり、仕事は元にもどっている。」

続いて、エクスパットRは"U"の隣に別の絵を描いた。観覧車見たいな図だ。

「あるいは、グローパル・チームの人間は、われわれ日本にいるチームをネズミ車の上にすぐ置く。」

観覧車みたいな図はネズミ車だったらしい。

「・・・ネズミ車の上ではどんなに努力して走っても、仕事は1センチも前進しない。」

「うん。そうね。」

「だから、お前は、特にグローバル・チームと仕事をするときには、いつも自分が"U"の中に置かれていないか、ネズミ車の上に乗っていないか、よくよく周りを確かめるんだ。」

どうやら、これはRらしい仕事の仕方についてのアドバイスらしかった。

「ありがとう。一つ質問していいか?」

「ああ、なんでも聞いてくれ。」

「"U"と"ネズミ車"、どっちもやっているようで実は仕事が進んでいない、という意味に理解したんだが、この二つには、何か違いがあるのか?」

「もちろんだ!! 違いはある。

 "ネズミ車"というのは、同じところをクルクル回っているというたとえだ。

 そして"U"というのは、しばらく進むと壁にあたり、それまでの前進が否定されるような状況だ。」


うーむ。わかったようでよくわからん。



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2010/02/05

マレーシア; 市民IDって何だ?

マレーシア航空でクアラ・ルンプールに行く飛行機には一部、コタキナバル経由という便がある。

(コタキナバルというのはボルネオ島にあり、キナバル山への入り口になる町である。)

さて、この飛行機に乗ってクアラ・ルンプールに行くと、一旦、コタキナバルに着陸して、ボルネオ島から乗ってくる乗客と、ここで降りる乗客とが一部入れ替わり、再度、飛び立った飛行機はクアラ・ルンプールに到着する。

つまり、この飛行機は、日本->マレーシアの国際線乗客と、ボルネオ島->クアラ・ルンプールのマレーシア国内線乗客が、飛行機の中で完全にミックスしてしまうわけだ。

マレーシアの入国管理局は一体これをどのようにチェックしているのだろう・・・?

という疑問を持っていたので、先日、マレーシアから来たビジターに聞いてみた。

「コタキナバルから、クアラ・ルンプールに飛行機に乗る人は、もしかしてパスポートが必要ですか?」

「いいえ。コタキナバルのあるサバ州はマレーシアです。マレーシア国内便ではパスポートは一切不要です。」

「例えば、成田発、クアラ・ルンプール行き・コタキナバル行きの飛行機では乗客が混ざってしまうけど、クアラ・ルンプールでの入国ゲートで、何か見せないといけないのでは?」

「あっ、それは、市民IDを見せることになっていて、パスポートは必要ありません。」

「市民IDって?」

「市民IDって、市民のIDカードです。」

そういって、そのマレーシアからのビジターはマレーシアの国民IDを見せてくれた。

パスポートを携帯して見せるのと、市民IDを携帯して見せるのと、一体どれほど意味の違いがあるんだろうか?

「ということは、もしかして日本には、市民のIDはないの?」

「ないですねぇ~」

なんでも、マレーシアでは子供が生まれると、みんなこの国民IDカード(写真付き)なるものが発行され、各人常に携帯しているものらしい。実際のカードも見せてもらった。日本の免許証みたいな写真付きカードに住基ネット番号が表示されているようなもののようだ。

「国民IDが無かったら、じゃあ、自分のIDはどうやって証明するの!?

 例えば、警官がやってきて、お前の国籍は何かって聞かれたらいったいどうするの?

 パスポートをポケットから出すの?」


この質問にうまく答えるにはどうしたらよかっただろう。

そもそも日本では、警官が一般人をつかまえて、

「パスポートを見せろ」

とか

「身分証を出せ」

とか言うなどという話は聞いたことが無い。

日本では一般的に身分証を携帯する習慣に乏しく、無い場合にでも無いなりなんとかやっていけるということを、彼らの常識ベースに、簡単に納得させられる方法はあっただろうか?



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2010/02/03

東芝の一部

あるとき留学寮に、日本の商社から一時的に英語研修のためにやってきた「トシヤ」さんという人が来た。

さて

このトシヤさん、寮の同じスイートの人間に会うたびに自己紹介して

「日本から来ました。TOSHIって、呼んでください。」

などとニックネームをいうのだが、非日本人にはこれは、ぱっと覚えられない。

相手が覚えられないと見るや、トシヤさんは間髪いれずにこう続けていた。

「TOSHIというニックネームは、TOSHIBAの最初の部分と同じです。」

とたんに、非日本人連中は例外なく、一度に納得した。

「あぁー、なるほど!!」

日本人男性で、"トシ××"さん、といった名前は少なくないが、このトシヤさんくらいガイジンに自分の名前を覚えさせるのをうまくやった人間は他にあまりいなかった。

もっとも、自分のニックネームを、一企業ブランド名のその又一部と、わざわざ自分から言うのが、一般的に見て、自尊心に反しない行為、と言っていいのかはよくわからない。



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2010/02/01

ケーキを買う経理課長

日本企業にいたころAさんという経理課長がいた。そのAさんがよく語る一つ話にこんなものがあった。


ある日の夕方、Aさんは社長に呼ばれ、

「おい、ケーキを買ってきてくれ」

と言いつかった。

そこでAさん、会社から最も近くでケーキを売っていると思われる近所のデパートに向かった。

ところがデパートの前についてみると、すでに閉店時間すぎのため、入口には警備員さんが立っており、残っている最後の客が出て行くのを待っている状態。

普通ならここであきらめるところだが、社長から直々に「ケーキを買ってこい」と指示されたAさん、

「ちょっと失礼!!緊急なんです!!」

と警備員を振り切って店内に突入。

地下食料品売り場に階段を走って降り、ケーキ屋に行くと、女性店員さんが店じまいのために布カバーを掛けようとしているところ。

「すみません!! 緊急でどうしてもケーキが必要なんです!!」

かくて閉店時間を過ぎたデパートからケーキを買い、無事に社長に届けたそうな。


この話はこれで面白い話なんだが、僕としてはどうも釈然としない。

なんでかというとこの話が、どうもある種の、武勇伝や、美談、自慢話のように聞こえるからだ。

そもそも目的不明のケーキを社長に言われたからといって、ここまで無理をして買ってくるのは、公私混同のみならず、果たして「経理課長」が能力を発揮して果たすべき「仕事」であるのか大変疑問だ。

とはいうものの、日本の大企業ではこうした、親分に対する子分の奉公が、それなりに効果があるのも確かなのだろう。

きっと、こんなことは僕には素ではできない・・・この会社で僕はこの先も気持ちよく働き続けられるのだろうか、そう思い始めていた。

最終的に外資に転職する2年くらい前のこと。



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