会社近くのお店の前で弁当を売っている黒人のおにいさんがいるのだが、いつも通りかがりに目があう人につぎつぎと声をかけている。
「よぉ!! おにいさん、げんき!?」
日本人がこういうことをやるとどうしても「いらっしゃい」と叫び続ける商売熱心なあまりのマジメ感が出るのだが、彼にはそういう雰囲気が全くないし、誰に無視されても全く気にしている様子もない。
「おねえさん! 今日もげんきダネ!?」
限りなくさわやかで、あまりに屈託がないので僕は本当に個人個人を認識して声をかけているのかあやしい、とにらんでいる。
売っている弁当は何料理かよくわからないのだが、素材に自然な味がして好きなのでよく買いに行く。
さて、ある日のこと。
「今日はまだ弁当ある?」
「あるよ~」
「昨日は売り切れだったもんね。これちょうだい。」
すると彼は僕の弁当を袋に入れながら歌うようにいった。
「あいあむ・そ~り~・・・・・ひげ・そ~り~」
ひげ・そ~り~に思わずふきだすと、彼はまだ続けた。
「にほんのそ~りは・・・」
「い、いいよ。わ、わかったよ。」
僕は笑いながら続きを制して弁当を受け取って帰ったのだが、夜になってふと思った。彼はどんな続きを言うつもりだったのだろう? 彼のセリフを反芻しながら考えた。
あいあむ・そ~り~
ひげ・そ~り~
にほんのそ~りは・・・・(!)
のだそ~り~
これって、七言絶句のように起・承・結で韻を踏んでいるじゃないか!!
もしかすると彼は詩人だったのだ。
今度また、弁当を買うときに聞いてみたい。彼はなんと言うだろうか?
「あいあむ・そ~り~
ひげ・そ~り~
にほんのそ~りは・・・・」


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