あるとき欧米駐在経験の長いインド人Aと食事をしていると、珍しくインドについて語り始めた。
「インドっていうのは複雑なんだ。インドでは人の言っていることが本当の場合とそうではない場合とがある。」
「・・・」
「欧米で誰かが『問題がある』と言ったら、きっと問題がある。しかし、インドではそうとは限らない。」
「・・・・・」
理解に苦しむ僕の顔を見ながら、インド人Aは続けた。
「そうだな・・・例えばこういうことだ。インドで何か問題が発生したとする。しかし、締切まで2ヶ月あったとしたら、インド人は『問題ない』と言う。1ヶ月前でも『問題ない』と言い、そして1週間前になって初めて『我々は問題を抱えている』と言い出す。」
「なるほど。」
僕はノープロブレムを繰り返すインド人を想像しながらうなづいた。
「インド人の言うことは立場と状況で変わる。もう一つ例を出そう。欧米では不要な品を売りつけるセールスマンがやってきたら、『それは要らない』と言って断る。おそらく日本でもそうだろう。」
「うん、そうだね。」
「ところが、インドでは不要な品を売りたがるセールスマンがやってきても、『そんなものは要らない』と言って断るようなことはしない。」
「えっ!? じゃあ、なんて言うの?」
僕はいったいインド人がしつこいセールスマンをどのように断るのか、固唾を呑んで聞き入った。
「インドではセールスマンを断るときにはこう言うのだ。 『明日、来い』、と。」
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