父親の仕事の都合で沖縄に引越し、僕は幼稚園~小学校低学年まで那覇に住んでいた。
が、幼すぎて沖縄のことはぜんぜん何も覚えていない。
こうして何も記憶にないのにアイデンティティーのみが存在する、という奇妙な状況を僕は抱えていた。
(それでも僕は沖縄の何かを知っているはずだ・・・・)
かすかな手掛かりを求めて、ホテルのインフォメーション・センターを訪れた。
普通は「首里城への行き方を教えてください」とか、「観光モデルコースを紹介してください」とかを頼むところである。
デスクには人のよさそうなお姉さまが座っていた。
「こんにちは。」
「はい。こんにちは。」
「あのー・・・・・
『じゅんみー』って、分かりますよね?・・・・」
「あっ、『ジューミー』ですね。はい。」
お姉さんの発音はやや僕の『じゅんみー』と異なっていた。
「あのですね。『じゅんみー』を見たいんですけど・・・、どこ行ったらいいですか?」
『じゅんみー』というのは小型のミドリ色のトカゲである。幼児の僕は那覇港近くのきゃべつ畑で毎日のようにこのトカゲを右手で握って捕まえていた。
(記憶喪失の人は、なにか象徴的ななにかを見ると記憶を回復することがあるのだ・・・)
ジューミー(=アオカナヘビ)の画像へのリンク
http://homepage3.nifty.com/japrep/lizard/kanahebi/text/aokana.htm
「ジューミー・・・・最近見なくなりましたねぇ~。
那覇ではすっかり見なくなりました。」
「えっ・・・那覇にいない・・・、じゃあ動物園とかにいますか?」
「うーん、・・・・ジューミー・・・動物園・・・たぶんいない・・」
まあ、そうなのだろう。
本土の感覚でいうと、きっとドジョウを水族館でみたい、とか聞いているのに等しい要求だ。
「じゃあ、どこに行ったら見れます?」
「そうねぇ・・・。運が良ければ、その辺にいるけど・・・ねぇ・・・。」
デスクのお姉さんは、振りかえってもう一人のお姉さんに訪ねた。
「ねえ、ジューミー、知ってる?」
「?」
「みどりのトカゲ。。。。中部(沖縄本島中央部)では、別の名前なのよね、アンダチャーとか。。。」
「あっ、アンダチャーね。・・・・そういえば最近、見ないですね。」
本物を見せられない替わりなのか、デスクのお姉さんは複数のホテル従業員に聞き込みをしてくれ、那覇の大半は『ジューミー』、中部は『アンダチャー』、宮古では『・・・』(ごめんなさい忘れてしまいました)などとまとめて教えてくれた。
突飛な要求に対してもやさしいデスク2人だが、なんで大の大人が小さなトカゲにこだわっているのか、さぞ疑問に思っただろう。
さて、こうして僕はジューミーは別名『アンダチャー』という情報を得て、失われた沖縄の記憶を求めて那覇の町に出ていくことにした。
2 件のコメント:
こんにちは。
ジューミー、とっても気になります!
次回、期待しておまちしていますw
ピッコラさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
実はたいした続きもないのではありますが・・・。
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