僕が留学寮に住んでいた年は、4年に一度のアメリカ大統領選挙の年だった。
テレビ・ラジオでは連日、候補者間のディベートやら、副大統領候補間のテレビ・ディベートなどが放映されており、僕は英語の練習のため、スピーチを録音したりしていた。
そんなある日、大学内の芝生広場に座ってジューイッシュのPとランチを食べていると、男子学生の集団が大声で、
「ブッシュ、クェール!! ブッシュ、クェール!! ブッシュ、クェール!!」
と手を振り上げて、叫びながら行進してきた。
正副大統領候補者名を大声で連呼し続けているが、あまりにハイテンションで、なんだかお祭りの神輿を担いでいる男たちのようにイッてしまっているようにも見えた。
その時である。
黙って、ランチボックスを食していたジューイッシュのPは鞄から、A4サイズの
『クリントン、ゴア』
のカラフルなカードを出して、騒々しいブッシュ・クェール軍団から正面に見える向きにして、自分の膝に立てかけた。
そして、そのまま無言で食事を続けた。
騒がしいリパブリカン達に対する静かで譲ることのない自己主張。
そのジューイッシュのPは、僕の周りで唯一、いつもホームレスに小銭をくれてやっていた男であった。
留学生はホームレスに金を渡すべきか?
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