こうしてリクシャはデリー駅に向けて出発した。
リクシャが走ると、生温かいインドの空気が流れ込んでくる。
ロータリーのような(ラウンドアバウトだ)交差点を二、三回曲がったりしてしばらく走り、そしてリクシャは商店街の一角に停車した。
ラウンドアバウトについて・・・直進・ブレーキ・半周 !!
そして、運転手はぼそっと言った。
「ここが鉄道駅だ」
ちょっと待て。
確かに僕はデリーの様子を知らないが、目の前にあるのはどう見ても鉄道駅ではない。
「デリーの駅に行ってくれ、といったはずだが?」
すると運転手は目の前の商店に進むように手振りをして、そして決まり悪そうに小声で言った。
「ここが駅だ。」
「ここは駅ではない」
すると運転手は困ったように続けた。
「今はホリの最中だから、鉄道チケットはとれる訳がない。」
運転手の指し示す方向を見ると、そこには一軒のオフィスがあり看板には英語も出ていた。
"Travel Agency"
という文字も見える。
つまり、リクシャの運転手はここの主人に言いつけられて旅行代理店に客を連れてきたのだ。
彼はここが駅でないこともわかっているが、ボスと客との間に板挟まっているのが見て取れた。
しかし、「ホリ」とはなんだろう・・・。
目の前の代理店に入って、ドンに直接話を聞かないとどうにもならないように思われた。
つづく
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