すると、タクシー乗り場で、飛行機で見かけたヨーロッパ人の白人青年が話しかけてきた。
「市内に行くなら、タクシーに一緒に乗らないか?」
こちらとしても話相手もできる上に、値段も下がるし大賛成である。
タクシーにはメーターがなかった。
まず白人青年が流暢なフランス語で値段を確認。
「市内まで120DHらしい。」
今度は念のためこちらも値段を聞いて確認。
「よし、120DHだ。」
しかし、振り返ると、これが後のトラブルの原因となる。
とにかく、白人青年と、メグミと僕の三人は、タクシーに乗り込みフェズ市内に向かった。
ほどなくして並木道も美しいフェズ新市内(フェズ・エル・ジュディード)に到着。
白人青年とは、3分の1である40DHこっちに渡してもらって、こちらからまとめて120DH支払いした。
すると、運転手がちょっと待てという。
そして、運転手が白人青年に、なにやら不満げにフランス語でまくしたてている。あまりに早いフランス語でこちらはついていけない。
(何かトラブっている・・・)
こういうときにはまず、タクシーを降りてしまうのが鉄則だ。
フェズ新市街の道路脇でタクシーを降りた、白人・運転手・メグミ・僕の四人はこうして並木道の下に立って口論を続けた。
どうやら、運転手は
・白人青年分 120DH
・メグミと僕の分 120DH
というように別々に120DHずつ、つまり合計240DH支払え、と言っているらしい。
「いいや、お前たちは別々に値段を約束した。支払え!!」
「それはおかしい!! タクシーの値段は人数で決まるものではない」
「だいたいお前たちは別々に来たじゃないか!!」
「いや、われわれは知り合いで一緒にフェズ観光に行くところだ」
(これは本当はウソ)
「そんなに言うなら、警察に来い!!」
「ああ、かまわん。警察行くぞ!!」
「じゃあ、車に乗れ!!」
「いやだね。警察には歩いて行くぞ!!」
「車に乗れ!!」
「警察へは歩きだ!!」
こんな場面で彼の車に再び乗ったら、どこか知らないところに連れて行かれ、法外な値段を要求されて飲まざるを得なくなるのがオチだろう。
かくてこの口論を4人で約15分続け、最後には運ちゃんはブツブツいいながら退却していった。
一応、僕らとしてはメデタシということにはなったのだが、しかし、後でこの運転手には再び会うことになるのである。


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