ある時、クアラ・ルンプールのオフィスを訪問すると、華僑Jが夕食をごちそうしてくれる、という。
華僑Jは中国的で、しかも大人の風格を感じさせる男であるから、何かしら思惑があるに違いなかったが、とにかくせっかくなのでごちそうしてもらうことにした。
「ワタシのよく知っている、郊外の現地料理店で、しかもカニ料理の専門店です。」
「カ、カニですか~ とても楽しみです!!」
僕としてもこの言葉にウソはない。
夕方、華僑Jの案内で、タクシーに乗ってカニ料理専門店に到着。
「この店には32種類のカニ料理メニューがあります。
あちらを見てください。」
店内の壁には、ずらりと32種類の異なるカニ料理の写真が掲示されていた。現地料理と聞いてきたが、その多くは中華のようにも見えない事もない。
人間、知識がないまま多くの選択肢を一度に出されると、なかなか選べないこともある。
結局、僕は華僑Jにお勧めカニ料理を選らんでもらった。
さて、
テーブルにやってきた『ペッパー・クラブ』なるカニ料理の一品に舌鼓を打ちながら、僕は華僑Jに持ち続けていた疑問を聞いてみた。
「ありがとう。とても、おいしいです。
ところで、このカニは何と言う種類のカニですか?
『上海カニ』とか『スリランカ・クラブ』とかいうカニの種類についてなんですが?」
すると華僑Jはぶっきらぼうにこう答えた。
「カニの種類? 知らん!!
スリランカではないから、マレーシアのカニだ!!」
32種類のカニ料理を自慢してくれた華僑Jだったが、カニの種類には全く興味がないようだった。
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