そこに青い制服を着た顔がムクムク弾けそうに太ったおにいさん、それから背の低い、これも制服を着たかなり神経質そうなおねえさんが、僕を目指してやってきた。
ムクムク顔のおにいさんが、かなり人慣れしていない調子でたどたどしく話しかけてきた。
「あの~、すみません。
じ、じ、実は今~、ま、麻薬探知犬の~
えー・・・訓練をやっていまして・・・・
ご協力いただけませんか?」
「はい!! 何をしましょう!!」
どうせ後は家にかえるだけだし、なにやら面白そうだ。
するとおにいさんは、ポケットからビニール袋に入った白い布切れを取り出しながら続けた。
「この白い布を足のところにおいてもらえませんか?
あ、あの・・・すぐ終わりますんで・・・。」
僕はその布を受け取って、靴の上から右足の甲のところに置いた。
「はい、わかりました これでいいですか?」
「あ、上からズボンで隠しててください。え~、はい、こんな感じで・・・」
おにいさんはちょっと中腰になり、僕の右足のズボンの裾をめくって布が隠れるようにした。
こうして新人くさい税関(?)職員ペアは僕の右足に、「ブツ」を仕込むと黙って歩き去って行った。
ちょっと想像力をかきたてられるシチュエーション。
場面はこんな感じだ。
僕は
「香港から麻薬を足に忍ばせて、密輸を図る悪役」
対するは
「正義感は強いがまだ不慣れな新人捜査官と、新人探知犬」
の戦い!!
おおー、あこがれの悪役をきちんと演じねば!!
そんな間にも、荷物ベルトのあたりに人が増えてきていよいよベルトが回り始めた。
つづく
面白いと思えたら、クリックお願いします
0 件のコメント:
コメントを投稿