古代から始まり、近世までにフィンランドの歴史展示を一通り眺め、最上階に行くと博物館ワークショップがあった。
入っていくと、満面の笑顔で親切な(かつ暇そうな)、学芸員おねえさんが寄ってきた。
「こんにちは。ここではなんでも手にとって触って作業してみてください。
これは15世紀の紡ぎ車です。」」
おねえさんに促されて、展示物の紡ぎ車の前の椅子に座ってみる。
「まず、材料を足すわね。」
おねえさんは傍らの綿の入ったカゴから、取手のついた剣山のようなものを2つ、左右の手に一つずつ持ち、間に綿を挟んだまま、器用に剣山をこすり合わせて棒状にして紡ぎ車につながっている先に足した。
(・・・確か紡績工程でいうスライバーというやつだ。)
「そして、こちらの紡ぎ車で巻き取ります。」
おねえさんは、左手の指先でスライバーをもみながら、紡ぎ車の大きな弾み車を右手でまわし、慣れた手つきで綿糸をボビンに巻き取って行った。
(・・・おお、これは紡績そのものだ。)
しかも、糸はガイドされてボビンに巻かれ、しかも巻き取るときに同時に糸に撚りが掛っている。
(・・・・こうしたカラクリは産業革命以前からあったものなのだ。)
そこで、親切なおねえさんに聞いてみた。
「昔、紡績工場で見学した機構と同じですね。
これって、もしかして一回まわすと、撚りが二回かかるというやつですか?」
すると、おねえさん、目をパチパチさせた。
「撚り?」
「そう。糸に回転が掛っていること。撚り。」
しかし、この質問は、歴史博物館の学芸員に聞くにはあまりに物理的な内容でありすぎた。しかも、紡績工場で見たというフレーズはまずかったらしい。
親切そうな学芸員のおねえさんはあっという間に表情を失い、こんな質問をするやつの相手はできないとばかりに奥に消えていってしまった。
それはそれとして、答えが知りたいので、この文を書くのに再確認した。
博物館にあった紡ぎ車(糸車)の構造はこちら
Wikipedia 糸車
一回転につき二回撚りがかかる機構はこちら
ダブルツイスター
ダブルツイスターの図は、どうしても頭の中にしっかり納得できるように落ち込まない。
図をにらむこと5分。博物館で見た紡ぎ車は一回転で、一回転分しか撚りがかからない、と心の中で断定し、そして改めて思った。
紡ぎ車は古くからある発明者不詳の工夫である一方、きっとダブルツイスターは産業革命後の発明に違いない、と。
終わり
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