フェズ近郊の下町を出発したタクシーは再び広い道路を走り始めた。
(今度こそ、タンジェに向かって走り始めたに違いない)
と思ったのだが、実はそうではなかった。
しばらく見覚えのある道を走りつづけ、そしてタクシーは今度はその日の早朝に、プチ・タクシーで乗り付けた、グラン・タクシー乗り場に到着。
"◎△&◆$●%▽#"
運転士は、何かを一言女の子に告げた。
そして、助手席の女の子も含めた乗客3人全員を停止したタクシーの中に残して、運転手はドアを開けて出て行ってしまったのである。
(今度はいったいなんだ?)
今度は、僕らはフロントガラスを通じて、運転手がグラン・タクシー乗り場で待機している仲間の運転手達と立って談笑しているのを無言で観察することになった。
その間、約10分。
確かに運転手にとっても、このタンジェ行きは急に決まった予想外の仕事であり、しかもタンジェのような遠方までドライブするのは、先に仲間に告げておくべき、稀かつ危険な任務であるのかもしれなかった。
そう、女の子がわざわざ自宅に寄って母親に途中経過と無事を知らせたのと同じような、そんな同じノリである。
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