学生の頃、僕は渋谷のフランス料理店でウェイターのバイトをしていた。
その店では新入りバイトには、まずカタカナのフランス単語メモが渡され、ウェイターは客から取ってきた注文をフランス単語を使いながら厨房に伝えることになっていた。
例えば、
「『ソルベ』を『ドゥー』お願いします。」
と言ったなら、それは『シャーベット2つお願いします』、という意味である。
さて、僕が入った次の日のこと。
ホールに立っていた僕は、ある5人客テーブルの一人から呼ばれた。
「すみません。パンのおかわりをもらえませんか?」
「かしこまりました。」
僕はポケットから単語帳を取り出して見ながら、言うべきセリフを確認した。
(おかわりのパンを5つ頼むには・・・・)
「えーっと、すみません。
『パン』を『サンク』、お願いします。」
するとベテラン・シェフが首を出してきた。
「なに? パンを三個?」
「ち・が・い・ま・す!!
パンを、『サンク』、です!!」
一体、何をやっているんだか・・・。
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