タクシーが下町の路地裏に停車したとたん、助手席にいたティーンエイジャーに見える女の子がドアを開けて外に飛び出して走り始めた。
プーッ、プーッ、プーッ
運転手は座席に座ったまま、何かの合図でもするようにクラクションを鳴らしている。
すると目の前の家から、スカーフをつけたおばさんが出てきて、走ってきた女の子を迎えた。
(目の前の家は、女の子の自宅だったのだ。)
クラクションを聞きつけて、近所の家からも次々とスカーフおばさんがやってきて会話に加わっている。
僕らはタクシーの後部座席からフロントガラスを通して、女の子がヒコーキが飛ばなくなって替わりにタクシーで行くことになったのよ~、などといったストーリーを話し、母親や近所のおばさまたちにそれに対していろいろとコメントをしている姿を無言のまま運転手と一緒に観察した。
約10分後、女の子は手を振り振りタクシーに戻ってきて助手席に座り、再び出発となった。
予定外のタクシーは、おばさま達に数日分の井戸端ネタを提供したに違いなかったのだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿