こうして僕らは、予定外にグラン・タクシーに乗ってフェズからタンジェに向けて旅することになった。
運転席; 数日前に口論した"あの"運転手
助手席; ティーンエイジャーに見える女の子
後部; メグミ、僕
のように灰色のベンツに乗り込み、フェズ空港を出発。
当然、僕は少なからず緊張していた。
(彼は僕らを覚えているだろうか? )
数日前の経緯を不快に覚えているのは当然として、僕らが同じ客であることがわかるだろうか?
運転手から見たら東洋人などみんな同じに見え、区別がつかないことを祈った。
もっとも、フェズ滞在中に僕らは他の東洋人にほとんど出くわさなかったような気もする。
そして、助手席のティーンエイジャーの女の子。
走り出すや否や、女の子と運転手は仲良く現地語で会話を始めた。女の子はいきいきとしゃべり続け、運転手も愛想よく返事を返している。
(運転手は少なくとも彼女をタンジェに届けるのには違いない・・・・)
しかしそうこうするうちに突然、タクシーはメインストリートから細い道にに折れて入った。
(遠くタンジェに行くのに、なぜほとんど走らないうちにこんな路地に入るのか?)
周りは、どうみても下町としかいいようのない庶民的な街といった感じだ。
タクシーはもう一度道を曲がって薄暗い路地裏に突っ込み、そして運転手はエンジンを完全に停止させた。
つづく
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