日本企業にいたころAさんという経理課長がいた。そのAさんがよく語る一つ話にこんなものがあった。
ある日の夕方、Aさんは社長に呼ばれ、
「おい、ケーキを買ってきてくれ」
と言いつかった。
そこでAさん、会社から最も近くでケーキを売っていると思われる近所のデパートに向かった。
ところがデパートの前についてみると、すでに閉店時間すぎのため、入口には警備員さんが立っており、残っている最後の客が出て行くのを待っている状態。
普通ならここであきらめるところだが、社長から直々に「ケーキを買ってこい」と指示されたAさん、
「ちょっと失礼!!緊急なんです!!」
と警備員を振り切って店内に突入。
地下食料品売り場に階段を走って降り、ケーキ屋に行くと、女性店員さんが店じまいのために布カバーを掛けようとしているところ。
「すみません!! 緊急でどうしてもケーキが必要なんです!!」
かくて閉店時間を過ぎたデパートからケーキを買い、無事に社長に届けたそうな。
この話はこれで面白い話なんだが、僕としてはどうも釈然としない。
なんでかというとこの話が、どうもある種の、武勇伝や、美談、自慢話のように聞こえるからだ。
そもそも目的不明のケーキを社長に言われたからといって、ここまで無理をして買ってくるのは、公私混同のみならず、果たして「経理課長」が能力を発揮して果たすべき「仕事」であるのか大変疑問だ。
とはいうものの、日本の大企業ではこうした、親分に対する子分の奉公が、それなりに効果があるのも確かなのだろう。
きっと、こんなことは僕には素ではできない・・・この会社で僕はこの先も気持ちよく働き続けられるのだろうか、そう思い始めていた。
最終的に外資に転職する2年くらい前のこと。
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