一般的にフェズからタンジェまで、という移動にはヒコーキには乗らない。
距離も近いし、しかも直行便はない。
が、時間節約のために僕はフェズ-> カサ・ブランカ-> タンジェ という乗り継ぎを予約していた。
朝5:00に起きて、ホテルから飛び出しフェズ空港に向かうことにした。
早朝のフェズ新市街は結構寒く、しかも人がまばらで不気味だった。
タクシーを探してしばらく歩くと交差点の角に赤いプジョーの小型タクシーが停車しているのを発見!!
「空港に行きたい。空港につれてってくれ。」
とタクシー運転手のおじいさんに言うと、予想外の回答が返ってきた。
「これはプチ・タクシーだから、空港には行かれない。」
「はぁ???」
フランス語のかみ合わない会話をして、おじいさんの言うことを整理するとこういうことだった。
タクシーには二種類のタクシーがあって、プチ・タクシーとグラン・タクシーという区分がある。
おじいさんの赤いタクシーはプチ・タクシーであるので、空港のような遠方に行くことはできない。
「じゃあ、どうすれば空港に行けるんだ?」
「10DHで、オレがグラン・タクシー乗り場に連れて行ってやる。」
「わかった。グラン・タクシーのいるところに連れてってくれ。」
なんだか昔話みたいだ。
大きなタクシーと小さなタクシーがあるなかで、慎ましくも小さい方を選んだのに、イマイチいいことがない。
おじいさんの赤いプチ・タクシーで、到着したのはただの空き地にしか見えなかった。
空き地に、洗車するとクリーム色になるのではないかと思われるようなグレーのベンツが、狭い丘のような空き地に折り重なるように停まっていた。
確かにグラン・タクシーらしきベンツはあるが、オフィスのようなものは見当たらない。
(誰もいないじゃないか!?)
もしかしてこれでは、これでは空港に行けないのではないかという不安を感じつつ、気合いを入れて叫んでみた。
「タ、タクシー!!」
すると、目の前のタクシーの後部座席からむくむくと人影が起き上がり、毛布をかぶった運転手が中から現れた。
空港まで120DH。
どうやらこれは、舌切雀ではなかったようだ。
僕は「大は小を兼ねる」という言葉を思い出しながら、まばらに木が生えた野原という、空港までの道のりを東の空が白む中で車窓に見たのだった。
1 件のコメント:
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
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