ヒコーキの一機もいないフェズ空港の待合室で、暇つぶしをしていると、係員がやってきて名前を呼ばれた。
「キミには選択肢が二つあり、そのどちらかを選ぶことができる。
まず、一つ目。カサ・ブランカ行きの本日午後のヒコーキは、22時出発だ。
もちろん、キミはそのヒコーキに乗ることができる。
それとも、これからタンジェへタクシーを出すので、そのタクシーに乗ることもできる。」
確かに、フェズから陸上を北上するとタンジェに到達する。このルートにはバスが走っており確かバスで6時間の行程である。
ヒコーキでカサ・ブランカを経由して行くよりも距離的に近いのはわかるが、これってつまり、
『ヒコーキが出ないので振替輸送としてタクシーで行かせてやるが、どうだ?』
という提案を受けているわけで、日本人的にはかなりあり得ない、予想もしないシナリオである。
が、朝の6時にチェックインして、そのまま22時までほとんど何もない待合室にいるのはとても耐えられそうもない。
一も二もなく、僕らはタクシーを選択した。
そして、念のため、空港係員に頼みこみ、手元のチケットの裏側に
『ヒコーキがないので、タクシーでタンジェに行くこととなった』
と説明文を書かせた上、ロイヤル・モロッコ航空のスタンプを押させた。
これで、日本に帰ってから旅行会社に文句の一つも言えるかもしれない、と思いつつ紙を受けとる。
フェズからタンジェへのヒコーキの振替輸送タクシーというオプションを選択したのは、僕らとモロッコ人らしい若い女性が一人だけだった。
われわれ3人の振替輸送組は取り返した荷物を運びながら、係員に先導されてタクシー乗り場へ。
そして、待っていたグラン・タクシーのドアを開けて待っていたのは、見覚えのあるドライバー。
フェズ到着初日に僕らが空港から新市街まで白人青年と同乗したときに、料金の支払い基準で揉めた末に、捨てセリフを吐いて去って行った、あのときのタクシー・ドライバーだった・・・。
フェズ・タクシー料金の支払い基準で口論する
つづく
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