留学寮に入った後、当然のこととして必要な日用品を近所の「倹約スーパー」等に行って買い集めてきたが、売り場にどうしても見当たらず買えなかったものがあった。
それは、包丁である。
近所の「倹約スーパー」で売っていた唯一の「包丁」らしきものは、刃渡り5センチもないような、しかものこぎりのように刃がギザキザしているものだった。
で、しかたなく近所のいろいろな店に行ってみたが、全くないか、同じギザギザナイフしか見当たらなかった。後からわかるのだが、これは僕が済んでいた地域の防犯レベルを示すものに相違なかった。
小さなギザギザナイフは非常に切れ味が悪く、あたかも飛行機に持ち込みを許可できる最低限のナイフという感じだった。例えば、しばらくたって郊外にある、車がないと行けないようなモールにいくと、あれほど探した包丁がなんのことはなくあっさり売られていた。
そう思って「倹約スーパー」を思い返すと、思い当たるフシがいくつも出てくる。
例えば、こんな点だ。
・一方通行
日本のスーパーだと入り口も出口も一緒になっているが、「倹約スーパー」は完全に一方通行だった。
・何も買わずに黙って出てくるのは困難
出口はすべてレジで押さえられ、レジ係のいないレジを通ることはできないように完全に通行止めとされていた。 〔日本のように立て札が出ているのみではないのだ。〕
・出口の外にはタテに鉄のバーが何本も立っている
バーとバーの間は、人ひとり分くらいしか間がなく、出口から何かをもって走って出て行くには一旦止まらざるを得ず、かなり不便だった。
で、結局、包丁はどうしたのかというと、しばらく後に僕はようやく包丁のみを扱う専門店をセンターシティーで発見し、他にオプションがないまま、分不相応なヘンケルナイフを購入したのだった。
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