あるとき、留学寮で知り合った中国人も含めて数人でバーに行き、いろいろな雑談をした。
しばらくして、酒がまわったころ、その中国人が僕に話を振ってきた。
「どうしてNHKはあんなに報道が偏っているのだ?」
「そうかな?」
その頃、僕の留学寮の部屋では、帰国した他の日本人が置いて行ったテレビはあったが、そもそも日本語の放送はなく、確か週に1回、NHKが流す英語ニュースを見られるだけだった上、それさえあんまり見てなかったから、全然ピンとこない。
「NHKの報道が偏っていることは認めるだろ?」
「・・・なんで」
いつの間にか彼の口ぶりは、僕がNHKの偏りを認めない限りは僕を文明人と認めないかのような雰囲気に変わっていた。
「中国の報道はニュートラルじゃないから、NHKがちゃんと報道しなかったら、誰がアジアのことをちゃんと報道するんだよ」
結局、彼が何の報道についてどうしてほしかったのかわからないままだったが、その日は海外にいる一人一人の日本人が、日本政府とNHKを代表しているように扱われることがある、ということを痛く味わったのだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿