おばちゃんは、左右に取ってのついたシルバーの鉄板を僕の前にセットされたコンロの前にちょんとおいた。
鉄板はまだ、冷たく、これから加熱して料理するという感じだ。
肝心の料理はというと、3センチくらいの短冊に切った種々の材料がなにやら赤い色のソースに絡めて山盛りに乗せられている。
「赤いソースはいったいなんだろう?」
唐辛子よりもやや薄い感じだし、細かくブツブツ赤いのではなく、もっとソースに溶け込んでいる様子だ。
そして、材料は・・・・とじっくりよく見ていくと、こんな割合だった。
・青ネギを切ったもの 1割くらい
・たまねぎを切ったもの 1割くらい
・残りの生っぽいやや透明感のある肉片 8割くらい
透明な肉片は縦方向にやや筋らしき線も見える。
「この肉片がきっとウナギなのだろう・・・」
妙に神妙に料理の材料を眺めている僕の横に、さっきのおばちゃんが戻ってきて、
カチッ!!
コンロのスイッチを回して、中火にセットした。
鉄板を経由して、コンロの火の熱が料理に伝わったであろうその5秒後のことである。
「う、うわーっ!!」
料理材料を注視していた僕は本当に肝をつぶして叫びそうになった。
鉄ナベの上に盛られていた赤いソースの絡まった料理の部分をなす、生っぽいやや透明感のある肉片の一片、一片が、熱を感じて一斉にウネウネと動き始めたのである。
「い、いきてる!? このウナギの肉片たち!!」
ウナギの肉片たちは約5分の間、僕の目の前で断末魔の動きを続け、ついにはウナギ料理が出来上がった。
実はあんまり、どんな味がしたのか覚えていないが、そこそこ食えるものだったのは間違いない。
赤いソースは辛いものではなかったことだけは確かだ。
が何にしても、僕は今に至るも料理を見てこんなに驚いたのはこのときばかりであり、ちゃんと味わったのか自信が持てないのである。
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