あるとき僕は休みを利用して留学寮を抜け出して、マンハッタンに住む日本人の友人Yのアパートに一週間ほど転がり込んだ。
Yはニューヨーク、しかもマンハッタン内に住んでいた。
どうも彼には留学するにあたり、マンハッタンにアパートを借りて一人暮らしをするという夢というかこだわりがあったらしく、観光気分の僕には都合がよかった。
そこで、僕は一週間の間、昼間は一人でニューヨーク観光をし、夕方に彼が部屋に帰ってくるころを見計らって、彼のアパートに戻り、一緒に夕食を食い、夜は毛布一枚を借りて板張りの床に直接寝る、という生活を繰り返した。(季節は夏だったのだ)
僕は今はなきワールド・トレード・センターに行き、ついでに、短い長さ20m(?)もないような、かのウォール・ストリートを一瞬のうちに通過。
そして、China town, Little Italy, Essex, Harlem, Little Hungryのようなエスニック・タウンを毎日見物してあるいた。
その金曜日のこと、家主の日本人Yは別の日本人Kも呼んできて、三人で食事をすることにした。
実はもともと、この三人は同時に成田を出発して留学を始めたのだ。
今はYもKもニューヨークで一人暮らしをしている。
Kが飼ってきた安ワインを飲みながら、盛り上がるのは当然、留学先での日本人共通の
「アメリカ人はおかしい」
という日本語会話。
一人暮らしの彼らは普段の会話が少なく、ストレスがたまっているようで、飲むにつれ、YもKもよくしゃべった。
そのうちに、どんどん声が大きくなり日頃のうっぷんを晴らす深夜までの大騒ぎ。
翌日、僕が昼間の観光から帰ってくるとYが開口一番にこう言った。
「アパートの廊下で隣のおじさんに文句言われたよ」
「やっぱり!? かなり騒いだもんね」
「でも、かなり穏やかな言い方されたんだ。」
「なんて?」
「今度、お友達が来るときには静かにしてくれって」
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