2009/07/22

ブルックリン・メニューのないアラブ・レストラン

シューカツをやっていた頃、ある金融機関の面接を受けにいったときに、ニューヨークについて聞かれたことがあった。

僕の留学内容を確認した後に面接官の中年男性が質問をしてきた。

「それでは、ニューヨークにも行かれましたか?」

なんで留学先の話でなくてニューヨークなのだろうと思いながら、僕は答えた。

「はい。友人のアパートにころがり込んで何日も見物してきました。」

「それではニューヨークはどんなところが印象に残りましたか?」

「・・・そうですね。。。

 マンハッタンから東に橋をわかったところにブルックリン・ハイツというところがありまして、

 そのあたりはアラブ街だったんです。

 せっかくだからと、全く英語の看板の出てない現地の人のみが入りそうな

 アラブのレストランに入って一人で食事をしたのが印象に残ってます。」


横から若い女性面接官がちょっと興味を持ったように質問をしてきた。

「そのアラブのレストランの中はどんな風だったんですか?」

「中に入ると、中華の丸テーブルのようなテーブルがいくつか空いていて、奥のテーブルには全身白い服にスカーフをつけたアラビア人の男性が10人くらい談笑してたんです。

 留学寮にクウェート人の友人がいたんで、彼に聞いたことがあるんですがアラブっていうのは男は男だけで集まって話をするっていうことなので、これを見て本当にそうなんだ、って思いました。」


「それで、そこでは、どんな料理を食べましたか?」

「えーっと、まず、あの注文ができなくて困ったんです。」

「英語が通じなかったんですか?」

「いえ。確かに言葉も通じなかったんですが、それよりもそのレストランにはメニューというものがありませんでした。」

「じゃあ、どうやって注文したんですか?」

「しょうがないんで、立って歩いて厨房に入って行って、コックさんにいくつもある鍋を一つ一つフタを開けさせてもらって、選びました。

 マトンの煮込みの入った鍋を指さして、これをくれ、という手振りをしてなんとかありつきました。」


「味はどうでしたか?」

「マトンの煮込みは、とても素材に対して素直な良い味がしました。おいしかったです。

 それから注文してないのにミントの入ったスープも出てきました。タイのスープのような感じでした。」


面接官2人は痛く感心してくれたように見えた。僕はというと、面接前の会社説明が気に入らなかったのでリラックスして言いたい放題という感じで面接終了。



その後、僕はこの会社にはコンタクトするのをやめ、それから数週間して僕が他の会社から内定を取ったころ、このときの男性面接官がわざわざ僕宛に電話をしてきたのだった。

「こんにちは。もう内定取って、決まってますよね?」

「・・・・はい。」

「わかりました。失礼しました。」

このとき僕はうかつには、そうかぁ、アラブのレストランの話はそんなに良かったのかぁ、などと思ったのだが、今の僕にはそうではない本当の理由がわかる。

あの面接官たる採用担当者は、自社の採用数に見合う学生が足りなくなってしまって、以前に面接に来た学生に片っ端から電話をしていたに違いないのだった。


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