その昔、日本企業に働いていたころに一度、
国から助成金なるものをいただいて、システムを納品したことがある。一応、お国のやることですから、Web等に公開された公募説明みたいなものがあって、漢字がいっぱいの申請様式を記入して、外郭団体様にご提出申し上げるわけです。
われわれの会社のテキトーな提案は、なぜか採用されたため、僕は各種の書類様式を提出し、他方で、社内の同僚たちは提案した「世の中の役に立つシステム」を指定された締切日までに開発しました。
さて
あまたの書類作成と提出手続きを突破し、
ついに
「世の中の役に立つシステム」を完成させた我々の前には、
大きな関門として、お役所によるシステムの『検収』
というどうしても避けられない手続きの日がやってきました。
僕らは会社の会議室に「世の中の役に立つシステム」をセットして、最後の審判を待つ我々。
と、『検収』する担当者としてお国を代表してやってこられたのは、
今まで、書類チェックをやってこられたのはお国のご担当者様たったお一人。
ん、書類担当者のこの人に、システムの検収なんかできるのか???
そもそも、この人、これが何に使うシステムなのかを理解しているのか???心の中に、もたげてくる当然の疑問・・・
そうこうするうちに、ご担当者様は、われわれの用意したパソコン端末に向って一言。
「はぁ・・これがそのシステムですね」「はい。そうです。」
「では、これから検収をします。」「はい。で、では椅子をどうぞ。」
「いえ、すぐ終わりますから立ったままで大丈夫です。言うとおりに操作をしてください」「はい。
では、・・・・えーと、今見えているのが、これがあの~開始画面でして・・・」
「そうですか。どこかに日付を入力するところはありませんか?」「ひ、日付ですか? あっ、あります。
ここをクリックするとカレンダーが出てきますので、好きな日付を選べます。」
「じゃあ、2024年を選んでください。」「は? 2024年ですか?」
「2024年の2月のカレンダーを出してください。」かなり突飛な内容に面喰うが、何しろお国の検収ご担当者様に言われたことである。
僕は、言われる通りに2024年の2月のカレンダーを出した。
「出ました。」
「実は2024年はうるう年なんですが、2月29日が選択できるか操作してみてください。」ドキリとした。
こんな先日付のしかも、うるう年に対応しているか、なんてことは全く事前に確認していない。
半ば祈るような気持ちで僕は2月29日をクリックした。
「で、できました。」
「そうですか。では、それを保存してください。」今度はやや安心しながら、保存ボタンをクリック。
「保存できました。」
「問題ないようですね。
はい。それでは『検収』は完了です。
お疲れ様でした。」は? もう、おわり・・??? とでも、言いたくなったがもちろん黙っていた。
かくして僕らは「世の中の役に立つシステム」を完成させた上に、XXX百万円という大金をいただき、日本経済の活性化に一役かったのだった。
いやぁ、世の中の役に立つって本当に気持ちいいですねぇ・・・。
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