トントン
・・・・・
トントン
・・・・・
3XX室の中からは、返事はなかった。
僕はすこしほっとしていた。
Uさんは留守なんかじゃなくて、この部屋にはしばらく来ていない、なぜかそんな風に直感した。
部屋に戻って、受話器をとってこう伝えた。
「お待たせ。
ノックしてみたけど、返事はなかった。
間違いなくUさんは寮の部屋にはいないよ。」
「・・・どうもありがとう。」
これを知って、彼女はどうするつもりなのだろう・・・。
「ねえ、もう一つお願いがあるの。
あなた、東京にあるUさんの自宅に電話をしてくれない?
Uさんの自宅は国際電話を切断設定しているけど、
日本からの国内電話はつながると思うの。」
いったい、Uさんと僕の部屋の間にいる2人は、いったい彼女からの電話にどう対応したのだろう。
なぜ、この役回りは僕なんだ?
「・・・電話して、なんていうの?」
「私の名前を言って、そして私に電話をしてくれるように伝えてほしいの。」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・僕は番号を知らない」
やっとのことで見つけた言葉はこれだった。
僕はフェミニストなのだろうか? それとも単に断れない男、か。
「番号をいうわ。メモして。XX-XXXX-XXXX。わかった?。」
「わかった。電話してみるよ。
明日の夜またいつものように電話して来てくれる?」
「うん。ありがとう。じゃあ、また明日。」
受話器を置く。
いったい、いつから会ったこともない東南アジア女性と「じゃあ明日」なんて言うようになってしまったのか。
とにかく、さっきノックをしたこの勢いで電話をするしかない。
生暖かくなっている受話器を再び取って、メモしたばかりの番号をまわした。
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2 件のコメント:
偶然たどりついたのですが、あまりにおもしろくて一気に読んでしまいました。
が、この女性の話は先が気になるけれど
なんともいたたまれない気持ちになります。
すこしでも笑顔になれる結末になってほしいのですが。。。
わざわざコメントいただきうれしいです。
最近ちょっとやる気を失っていたのですがちょっと元気が出ました。
ありがとうございます。
結末は・・・明日(その7)で。
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