東南アジア女性と毎晩、電話で話をするようになって4日目になった。
「職場に電話をかけて、こういう話はしてないの?」
「全員、『Uさんは不在です』と一言だけで切られます。」
ということは、会社ぐるみでグルになって彼女を無視していることになる。
なんだか日本人として、とても不名誉に感じた。
彼女は会社、自宅、そして寮にも毎日、私生活を投げうって電話を掛けているのに、無視されつづけ、ようやく、たまたま電話に出た僕にまともに話を聞いてもらっている、という感じだ。
迷っている僕をよそに彼女の独白は続いた。
「私、Uさんから『日本に呼ぶから待ってて』って、言われただけなのに、なぜこんなに突然、Uさんと話もさせてもらえないんですか?」
「・・・・・」
「正義はどこにあるの!!」
「・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・あなたは正しい。」
僕はようやくこの一言を発した。
彼女の言うとおりなら、こんな妨害を会社ぐるみでやるのはおかしい。
「だから、お願い!!
寮の3XX室に行って、中にUさんがいるのか、ノックして確かめて!!
いるのか、いないのか、それだけでも知りたいの!!」
「・・・・・」
寮の部屋は、番号順では僕の隣から角を曲がって以降は構造上、もっと立派な部屋になっている。
僕は昼間、会社の電話帳でUさんという人がどんな役職の人か確かめていた。
役員まではいかないが、かなりえらい人。
少なくとも入社2年目の僕には間違いなく、雲の上の人。
角を曲がったえらい人用の部屋に行って、見ず知らずのえらい人がいるのかノックをする・・・。
いつもの僕なら絶対にできない。
が、『正義はどこにあるの!!』という彼女の悲痛な叫びが僕を後戻りできなくさせていた。
「・・・・・わかった。
3XX室に行って、ノックをして確かめてみるよ。」
「・・・ありがとう。待ってるわ。」
部屋を出て、角を曲がると 3XXのドアはすぐ目の前にあった。
ドアの前には間違いなくUさんの名前が表示されている。
やるしかない・・・・・
重たい息をはいて、僕はドアをノックした。
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