あるときベンガル人アーリジットといつものようにテニスの後に一緒にフードコートに入って食事をした。
今日の食い物はカレーとナンである。
ナンを食べながら、アーリジットは言った。
「ホントはな、ナンっていうのは金持ち用なんだ。」
「どういう意味?」
「海外のカレーレストランなんかにあるのはこういう柔らかいナンばっかりなんだけど、
でも、インド国内ではナンよりもチャパティの方が普通だ。」
「どう違うの?」
「チャパティは小麦粉をこねて、鉄板の上で焼くだけ。
これに対して、ナンはパンみたいにやわらかいだろ、
つまり、発酵が必要だ。」
「だから、高級なんだね。」
「でも、もっと決定的な差がある。
ナンを焼くためには、タンドーリが必要だ。
だから、自宅でナンを食べるためには、
まず、ちゃんとした家があって、その上でタンドーリがなければならない。
だから、ナンっていうのは、お金持ち用。」
このときはあんまりなんとも思わなかったが、後年僕はインド旅行に行き、道端の青空の下でチャパティを焼いている人たちをみて、アーリジットがこのとき語った意味をようやく理解したのだった。
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