2009/04/30

ジョークの好きなネパール人

留学寮にいたネパール人Sはなぜか酔うと小話というか、ジョークを語りだし、その語りが止まることはなかった。

とはいえ、自分で語ってくれているうちはまだ良く、そのうちに周りにいる他人にも自分のように様々なジョークを語るように要求しはじめて困るのだが・・・。

彼が語った無数のジョークのうち、記憶に残るただ一つを思い出して書いてみる。



あるところに男がいた。

男は風邪でのどを痛めていて小さな声でしか話すことができなかった。

こんな風に。。。。

(かすれた小声で)  「ハロー」

その日、男は友人に借りた本を返すことになっていたので、家を訪れてドアにノックをした。

とん とん

すると友人の奥さんが戸口に出てきたので、彼はこう尋ねた。

(かすれた小声で)  「ハロー、ご主人はいますか?」

すると奥さんは、同じように声をひそめて、しかし嬉々としてこう答えた。

(声をひそめて)  「いないわ!  どうぞ入って!!」



原文は下記の通り。
"Is your husband here?"

"No, come in!!"



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2009/04/29

スコットランド人は星型が書けない!?

ある日のこと。

僕はスコットランド人ルーニーと仕事の日程を相談するため、キーとなる日付に☆を入れたスケジュール表を印刷して、打ち合わせをしていた。

打ち合わせの結果、日程を少し変更することになり、僕は何の気なしに修正後の日程を入れるためペンで☆を記入した。

と、そのとき。

「ちょっと待った!!」

「なに?」

「今、星型をどうやって書いた?」

「こんな感じ」

僕は、日本人ならおそらく誰でもやるように五角形の対角線をひくやり方で一筆書きで書いた。

「どうやって書いた!?」

たかが星型に尋常じゃない反応だ。

「他に星型の書き方なんてあるのか? キミはどうやって書くのさ?」

「こんな感じだ。」

彼が書いたのは、正三角形を二つずらして書いたいわゆる「ダビデの星」。

イスラエル国旗の真ん中にあるやつだ。

彼のペンからこんなものが出てきたことに少々驚きながら返答した。

「書き方が違うんじゃなくて、そもそも形が違うんだよ。

 僕が書いてるのは五角形の星、キミのはダビデの星。」


「書き方を教えてくれ」

ご要望に従い、一緒にホワイトボードで一筆書きで正五角形の星を書く練習。

ホントは、この時間にスケジュールの相談をするはずだったんだが・・・いやはや。



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2009/04/28

政治的に正しい「フィリピノ語」

あるときにフィリピンの外交官と雑談をする機会があった。以下はその時にした話。

「フィリピンの国語は英語でした?」

「フィリピンの国としての標準語は、英語とフィリピノ語ということになってます。」

「フィリピノ語ってあんまりきいたことがないけど、タガログ語とはちがうの?」

「うーん。良い質問ですね。

 実はフィリピノ語は『タガログ語』と同じという人もいますが、実は違うのです。」


「つまり、同じなんだ?」

彼は外交官らしくにこやかに説明を続けてくれた。

「フィリピンっていう国は、多数の島々からなっている国でして、

 島によって異なる言語が実はかなりいろいろあります。

 ルソン島ではタガログ語がメインですが、それ以外の島では、必ずしもそうではなく、

 タガログ語をベースにして、種々の言語を取り入れて、フィリピンの国の言語を

 つくった、それがフィリピノ語です。」


「・・・・・」

「だから、フィリピンの国語はタガログ語ではなくフィリピノ語です、というのが政治的に正しい言い方になります。」

僕はこのもってまわったような言い方を繰り返されて納得した。

ある言語をベースにしながら、種々の言語を取り入れるなんていうのはどだい無理な話で、結局のところリアリティーとしては、フィリピノ語とタガログ語の中身は一緒ということなんですね。



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2009/04/27

アメリカ人を相手に蒙古班の説明に失敗する

留学寮界隈にNといういつも態度Lな自信満々な日本人がいた。高校で英語教師をしていたが、教え子と結婚してしまい夫婦で留学してしまったというような奴だ。

あるとき僕はNがアメリカ女性と雑談をしていたところに通りがかり、呼び止められた。

「おい、ちょっと、聞いてくれ。」

「なに?」

「今、蒙古班の説明をしているだが、どうしても信じてくれないんだよ。」

「・・・・・一回、説明してみてよ。。」

「じゃあ、もう一回いうぞ。日本人を含むモンゴル系の人種では赤ちゃんが生まれてきたとき、みんなお尻に青いアザがあるんだ。」

「そんなのジョークでしょ!! ね。」

なるほど、Nが必死に説明しているものの、そのアメリカ人はからっきり信用していない様子だった。

今は、僕が両方から注目されてしまっている。なにか言わねばならない。

「本当さ。うそじゃない。」

「ええー、だって、人間なのに、お尻が青いなんてありえない。」

「いや、本当だ。」

「じゃあ、青いってどういうこと?」

実は、Nも奥さんはいてもまだ子供がいないし、僕も生まれたての子供のお尻なんてあんまり見たことがない。

Nも僕も知識として知ってはいるものの、実際の蒙古班をちゃんと見たことがないから、『青いってどういうこと?』と聞かれると弱く、きちんと説明できないあいまいさが悪循環を生んでいたのだった。

結局、Nと僕の説得は中途半端なままで終了。

何か良い方法はあったんだろうか?



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2009/04/26

刺身は広まっても、ワサビは広まらない?

エクスパット、ビジターを問わず、日本にビジネスでやってくるガイジン達で、寿司・さしみを知らなかった人間は未だ見たことがない。

ま、そのくらいは常識になっているのだろうと思うが、それはそれとして、

その割に案外ワサビというものが浸透していないなぁ、

と思うのだ。

先日もフランス人ビジターのVや英国人Rをランチにつれていった店で刺身が出てきたが、二人とも器用に箸をつかって食べたが、二人とも刺身にワサビは使わなかった

確かにネタがうまければ、ワサビなんかなくても十分うまいものはうまいし、むしろ安物ワサビをたっぷりつけるとかえって味がわからなくなる、というのも正しいような気がするので、案外、彼らの方が素材の味をしっかり味わっているかもしれない、とも思う。

しかしだ。

思うに西洋人的には、

「ディップやソースをどう使うかは、食べる本人の自由」

といった思想がもともとあって、だから、

ワサビなんかつけなくても、私はおいしい寿司を食べた、

と考えるからワサビが浸透しないのではないか?


日本から発した寿司はいつの日か、サビあり標準から、外ワサビ標準に変わり、

「ワサビをどう使うかは、食べる本人の自由」

みたいな外人標準的なワサビ・マナーが逆輸入される日が来るような気がしてならない。



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2009/04/25

ヨーロッパの男は料理しない!?

留学寮の同じスイートに住んでいたフランス人のジョン・フランソワのところには、よく彼女が遊びに来ていた。

あるとき、ジョン・フランソワの彼女がスイートのキッチンにやってきて、僕が夕ごはんを作っているのを見て、こう言った。

「男が料理しているのって変ね。」

「そうか?」

すると、ソファーに座っていたジョン・フランソワが替わりにこう答えた。

「ヨーロッパの男は料理しないんだ。女がやる。」

そういえば、確かにジョン・フランソワは彼女が料理をしているのをいつも横で見ているだけだった。

最近、フランスの男は日本よりも家事をする、みたいな新聞記事を見ることがあるが、すくなくともつい最近まで、日本とそんなに大差はなかったはず、と僕は思い込んでいる。



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2009/04/24

Oh ロックン・ロール !!

ブルージュから再び電車に乗った僕は、港町オステンドまでやってきた。

ここにやってきたのは、ここからフェリーに乗り、英国・ドーバーにわたるためである。

フェリー時間待ちのために付近を歩くと、オステンドにも多少古い町並みが残っており、ブラッスリーでは平日にもかかわらず多くのオヤジたちがビールをあおっていた。

さて フェリー出発。

海はかなりシケていた。

あたりまえだが、カレーからドーバーに渡るよりも遠く、時間がかかる。

僕ががらんと空いた船室に所在なく転がっていると、ヘッドホンをつけたオヤジが通路を歩いてきた。

そのオヤジは、波に揺られて、酔っ払いのように手すりを伝って歩いていたのだが、よろめきながら彼がこうつぶやいたのを聞いた。

「Oh ロックン・ロール !!」

そうなのだ。

ロックン・ロールっていう意味は、元々、こうしてゆらゆらすること。

それとも、彼はヘッドホンで何を聞いていたのか???


ユーレール旅行シリーズはこれで終了

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2009/04/23

カギがないブルージュの宿

ブラッセルから電車でブルージュにやってきた僕は、ブルージュの駅からブルージュの町がかなり遠く、バスを使ってブルージュの町に入った。

バスの窓から煉瓦作りで赤い瓦のブルージュの家々を眺めながら、ここは安野光雅の絵本に出てくる町みたいだ、と思った。

宿の部屋は2階になったが、とにかく当惑したのはカギがないこと、であった。

宿の正面入り口には鍵もセキュリティーもおらず、階段をあがってすぐの自分の部屋のドアにも鍵がない・・・・。

アメリカのカギあり生活に慣れてしまった僕は、強く思った。

「鍵、かけたい・・・」

実際、この宿は歩いて一周できるブルージュ環状道路に面しているものの、観光シーズンを外れていることもあってほとんど人の気配もなく、治安に不安があるとは思われなかったが、そこは慣れと思い込みの問題だ。

人は、いったん鍵に守られた生活に慣れると、鍵なくして生きられなくなるのだ。

同様に、一度、銃を持ちはじめた人間は、きっと銃を持たない生活は不安でたまらないに違いないと思った。



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2009/04/22

現地妻のジハード(その7)

Uさんに電話をかけた翌日の夜、僕はすでに今までとは変わっていた。

ルルルルル

受話器をとる。

「ハロー。☆☆☆よ。」

もともと予期しているし、名乗ってくれなくても、なまった英語だけで誰だかはすぐわかる。

「こんばんは。」

「Uさんに電話してくれた?」

「はい。約束通り、私はUさんの自宅に電話しました。

 しかし、電話には誰も出ませんでした。Uさんは不在でした。」


「どういうこと?」

「ですから、いただいた電話番号に掛けてみましたが誰もでませんでした。」

彼女には、既に僕の声と態度はあきらかに昨日までとは全く違うことはわかったようだった。

そして、それが新たに『会社の手』が僕にもまわったということを意味することも。

こうして僕は日本の会社の一員として行動することを選び、数日間、電話で会話を共にした東南アジア女性を裏切った。

そして、僕はフェミニストではなくて、ただの断れない男であることを自分自身に証明した。

10日ほど後、会社ではUさんの明らかな左遷人事が発令された。

会社社員を巻き込み、身から出たサビの始末に協力させたUさんには、日本の会社の内部のケジメとしての人事が発令され、わかる人にはわかる一定の示しとともにこの事件は終了した。

その後、彼女がどうなったのかは知らない。

でも、社員がグルになって立ちはだかる日本の会社を相手に一人で戦い、そして

「正義はどこにあるの!!」

と訴えた彼女の悲痛な叫びが、心からは消えないまま僕は会社と自分自身がすっかり嫌いなっていた。


現地妻のジハード・終わり


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2009/04/21

現地妻のジハード(その6)

ルルルルルル

「はい。Uです」

電話からは、初老の男性の声がした。

ま、まさか本人!!

てっきり奥さんが電話に出ることを予測していた僕はいささかうろたえた。

「あ、あの、こんばんわ。

 □□□寮の3XX室に住んでいる者ですが、Uさんをお願いします。」

「私がUです。どうも、こんばんは」

その男性、Uさんはとても落ち着いていた。

「あのー、☆☆☆という名前の女性から毎晩のように電話が寮の私の部屋に掛かってまして、

 えーと、あのー、Uさんにどうしても用事があるので、

 なんとか電話を取り次いでほしいということで何度もお願いをされまして、

 それでー、あのー、こうしてお電話している次第なんですがぁ・・・。」

「あー、そうなんですか。それは大変ご迷惑をおかけしました。」

僕の予想に反して、Uさんの声は会社のえらい人のものとは違い、とても平らかで、優しく、僕に対する思いやりに満ちていた。

「じゃあ、きっと彼女からもいろいろと話を聞かれているんですね。

 彼女はもともと、現地に赴任しているときの僕の部下でしてね、とても優秀でした。」


なるほど、確かに彼女の話ぶりは知的だったし、実行力も実証済みだ。

「今は、職場の全員に彼女からの電話を無視してくれるようにお願いしていましてね。

 この家の方も、妻はいったん実家に帰したりして、一人で休憩をしているところなんです。」


「・・・・そうなんですか」

Uさんの声は会社での出世をすべてあきらめ、なにもかもを失って、静かに暮らしている者のみが発する落ち着ききった、不思議な優しい声だった。

「そういう状況ですから、申し訳ないがあなたにも協力していただきたいのです。

 彼女には『電話を掛けたがUは不在だった。』、必ずそう伝えて電話を切ってください。

 これは会社のオフィスを含めて、関係の出てきた全員に協力してもらっています。

 そして『電話を掛けたがUは不在だった。』という以外の情報は一切伝えないでください。

 あなたにも、ご協力いただけますね。」


仕事が出来る大部長にとって、僕みたいな入社2年目の小僧にこんな説得をするのはわけないことだったのかもしれない。

僕は心の中で、なにかがぷちっと切れてしまったのを感じた。




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2009/04/20

現地妻のジハード(その5)

暗い廊下にノックの音がひびいた。

トントン

・・・・・

トントン

・・・・・

3XX室の中からは、返事はなかった。

僕はすこしほっとしていた。

Uさんは留守なんかじゃなくて、この部屋にはしばらく来ていない、なぜかそんな風に直感した。
部屋に戻って、受話器をとってこう伝えた。

「お待たせ。

 ノックしてみたけど、返事はなかった。

 間違いなくUさんは寮の部屋にはいないよ。」


「・・・どうもありがとう。」

これを知って、彼女はどうするつもりなのだろう・・・。

「ねえ、もう一つお願いがあるの。

 あなた、東京にあるUさんの自宅に電話をしてくれない?

 Uさんの自宅は国際電話を切断設定しているけど、

日本からの国内電話はつながると思うの。」


いったい、Uさんと僕の部屋の間にいる2人は、いったい彼女からの電話にどう対応したのだろう。

なぜ、この役回りは僕なんだ?

「・・・電話して、なんていうの?」

「私の名前を言って、そして私に電話をしてくれるように伝えてほしいの。」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・僕は番号を知らない」

やっとのことで見つけた言葉はこれだった。

僕はフェミニストなのだろうか? それとも単に断れない男、か。

「番号をいうわ。メモして。XX-XXXX-XXXX。わかった?。」

「わかった。電話してみるよ。

 明日の夜またいつものように電話して来てくれる?」


「うん。ありがとう。じゃあ、また明日。」

受話器を置く。

いったい、いつから会ったこともない東南アジア女性と「じゃあ明日」なんて言うようになってしまったのか。

とにかく、さっきノックをしたこの勢いで電話をするしかない。

生暖かくなっている受話器を再び取って、メモしたばかりの番号をまわした。




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2009/04/19

現地妻のジハード(その4)

東南アジア女性と毎晩、電話で話をするようになって4日目になった。

「職場に電話をかけて、こういう話はしてないの?」

「全員、『Uさんは不在です』と一言だけで切られます。」

ということは、会社ぐるみでグルになって彼女を無視していることになる。

なんだか日本人として、とても不名誉に感じた。

彼女は会社、自宅、そして寮にも毎日、私生活を投げうって電話を掛けているのに、無視されつづけ、ようやく、たまたま電話に出た僕にまともに話を聞いてもらっている、という感じだ。

迷っている僕をよそに彼女の独白は続いた。

「私、Uさんから『日本に呼ぶから待ってて』って、言われただけなのに、なぜこんなに突然、Uさんと話もさせてもらえないんですか?」

「・・・・・」

「正義はどこにあるの!!」

「・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・あなたは正しい。」

僕はようやくこの一言を発した。

彼女の言うとおりなら、こんな妨害を会社ぐるみでやるのはおかしい。

「だから、お願い!!

 寮の3XX室に行って、中にUさんがいるのか、ノックして確かめて!!

 いるのか、いないのか、それだけでも知りたいの!!」


「・・・・・」

寮の部屋は、番号順では僕の隣から角を曲がって以降は構造上、もっと立派な部屋になっている。

僕は昼間、会社の電話帳でUさんという人がどんな役職の人か確かめていた。 

役員まではいかないが、かなりえらい人。

少なくとも入社2年目の僕には間違いなく、雲の上の人。

角を曲がったえらい人用の部屋に行って、見ず知らずのえらい人がいるのかノックをする・・・。

いつもの僕なら絶対にできない。

が、『正義はどこにあるの!!』という彼女の悲痛な叫びが僕を後戻りできなくさせていた。

「・・・・・わかった。

 3XX室に行って、ノックをして確かめてみるよ。」


「・・・ありがとう。待ってるわ。」

部屋を出て、角を曲がると 3XXのドアはすぐ目の前にあった。

ドアの前には間違いなくUさんの名前が表示されている。

やるしかない・・・・・

重たい息をはいて、僕はドアをノックした。




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2009/04/18

現地妻のジハード(その3)

夜になると、東南アジアの女性から電話がかかるようになって3日たった。

会ったこともない人だが、彼女も最初は電話を取り次ぎを頼みにかけてきたはずなのだが、話を聞いているうちにだんだん彼女は僕をあいてに、そもそも何でこんなことをしているのか、その経緯を語りはじめた。

「私はUさんが海外赴任している間に、とてもお世話になって、一緒に暮らしていたんです。」

「うん・・・」

つまり現地妻ということか。

「Uさんの海外赴任が終わって、日本に帰るときに、Uさんは私にこういいました。

 『日本の妻とは別れて、それからキミを呼び寄せる』って。」

「・・・うん。それからどうなったの?」

「だから、Uさんが日本に帰ってから、この2か月間、私は日本にいるUさんに連絡しようとしつづけているのです。」

「Uさんからは連絡はないの?」

「全くありません。

 だから、私は会社に連絡したんですが、職場の人はみんなUさんはいないっていうし、

 自宅の電話は国際電話がつながれないようになっているし、寮に電話しても常に出ないし・・・」


僕にはなんだか彼女がとても気の毒に思えてきた。

僕は同じ会社にいるらしいUさんという人も知らないし、何があったのかもよく知らないが、この男は逃げ隠れせず、直接彼女にあって話をするべきだろう。

「前から疑問に思っていたんだけど、何で僕のところの電話にかけてきたの?」

「Uさんの寮の電話に何度もかけているときに、番号を間違えて隣の人にかけてしまったんです。

 それで、寮の電話番号を一つずつずらしていくと、寮の隣の部屋に順番に掛かることがわかりました。」


この人はいったい何回、国際電話をかけ、どれだけ一生懸命の努力をしているのだろう。

お金も、時間も何もかも後回しにして、私生活はきっとめちゃくちゃになっているに違いなかった。




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2009/04/17

現地妻のジハード(その2)

東南アジア女性はその翌日の夜も電話を掛けてきた。

「はい、もしもし」

「ハロー、こんにちは。昨日は長時間ごめんなさい。」

ふと思った。

そうなのだ、この人、これを国際電話でしているのだ。

かなりの料金になるはずだ。

「・・・いったい何をしたいんですか?

 Uさんという人がいるのか、会社で一応調べて見ましたけど、オフィスにいると思いますよ。

 会社に電話したらいいんじゃないですか?」

「私、会社には何度も電話しました。

 でも、今ではもう同じ職場の人は皆指示されていて、Uさんにはつないでもらえないのです。」


「どういうことですか?」

「Uさんいますか? って聞くと、不在ですって、誰が出てもそう言うようになってしまったのです。」

「・・・・・」

「それに今は、Uさんの自宅も、国際電話を接続しないようになっていて電話できないのです。」

「職場がダメで、自宅もダメってことね」

「私、家族の事情で日本にはいけないのだけど、どうしてもUさんと話をする必要があります。」

夜の長時間電話をつづけること数時間、僕には彼女が変な人間とは思えなくなってきていた。




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2009/04/16

現地妻のジハード(その1)

日本企業で働いていたころ、僕は会社の用意する寮なるものに住んでいた。

寮には、新人から単身赴任者まで一人ものが住まいして、大浴場やトイレや洗濯機が共用になっていた。

ある夜のこと、部屋でくつろいでいた僕の部屋で電話が鳴った。

「はい、もしもし」

「ハロー、Uさんいませんか?」

いきなり英語である。ネイティブではない。東南アジア系か?

が、とにかく、僕はUさんではないので、その女性にこう答えた。

「番号をお間違いですね。僕はUさんではありません。」

ところで、その女性はこう言ってきた。

「わかっています。でもUさんを知りませんか?」

「Uさんなんて人は知りません。」

「あなたは×××会社の寮にいるんでしょう。」

驚いたことに女性の認識は正しかった。

「・・・・」

「×××会社の寮、その3階にいるんでしょう?」

この人、なんでそんなことがわかるんだ???

「・・・・・」

女性は僕の戸惑いをよそに言いたいことを続けた。

「あなた寮の同じ階の3XXという部屋に、Uさんがいるはずなんです。」

「・・・そこまでわかっているなら、直接電話したらいいじゃないですか?」

「・・・それができるなら、こんなことはしません。」

「寮の部屋には全部電話がついてますよ。」

「私は今、△△の国(東南アジア)にいます。Uさんの電話は海外からの電話は接続しないようになっているんです。」

「・・・なんでなんですか?」

「とにかくお願いです。」

「なんで僕がそんなことしなきゃいけないんですか?」

「お願いです。寮の中を歩いていって、同じフロアにあるUさんの部屋に言って、電話を取り次いでほしいんです。」

「僕はUさんという人を知らないんですよ。」

「どうしてもUさんに話をしたいんです。」

「・・・・・」

この日、僕はなんだかよくわからないまま、この東南アジア女性と意味不明な押し問答を1時間続け、なんとか電話を切った。




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2009/04/15

ヒューマン・リメイン って何?

外資系企業では人事部のことをよくHRと略して言う。(HR=ヒューマン・リソース;"Human Resource")

エクスパットのRはあるとき、HRのやり方が気に入らないと言って怒り出し、こんなことを言った。

「あいつらHRを、なんでHRと呼ぶか知っているか?」


「・・・・・」

「あんなやつらは、ヒューマン・リメイン("Human remain")だ。」

そこで思ってしまった。

うーん・・・

けなして言っていることだからどうでもいいといえばいいけど、

ヒューマン・リメイン("Human remain")って何? 

人間の残り? か




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2009/04/14

モモタロウ体験(その2)

かくて、組合のリーダーB氏に従って、サル・イヌ・キジ役となった僕たち3人はモモタロウ行脚に出発した。

救いは、天気が良かったことと、モモタロウ・ルートがかなり田舎に設定されていて、ほとんど通行人のいない道を歩きつづけたことだった。

「"○山×男をお願いしま~す!!」

「"○山×男をお願いしま~す!!」


田舎道を歩きながら、ひたすら同じフレーズを繰り返し、日曜日の昼下がりで窓が開いている家々に向かって、"○山候補"の名前を連呼する。

「"○山×男をお願いしま~す!!」

僕らは日曜日の午後、4時間にわたって歩きつづけようやく駅前の選挙事務所に戻った。

組合幹部のAさん、Bさんがすでに仕事の終わった電話チームとモモタロウ・チームを集めた。

「いやぁ~。今日は皆さん、お疲れ様でした。

 ところで、組合では何かやってもらうたびに日当を出してますが、

 今日は皆さん全員、"○山候補"が個人的に好きでやってもらった、

 ということですから日当はありません。

 ていうか、選挙活動してくれた人にお金を払うと、

 後ろに手がまわるんですね。」


なるほど、それはそうだろう。

サル・イヌ・キジの三人は聞き分けよく納得し、とぼとぼと会社の寮に帰った。

唐突だが、モモタロウ体験後、僕は選挙があると意地でも投票に行く。

なぜって投票総数が下がると、組織だけで当選できてしまうことを体感したからだ。

政治不信を理由に選挙に行かない人は、おそらく間違っている。

誰に入れるかはある意味どうでもよく、当選ラインを上げるだけで、当選議員は特定組織のみのいうことを聞くわけにはいかなくなるはずなのだ。




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2009/04/13

モモタロウ体験(その1)

昔、日本企業で働いていたころ、僕は会社の労働組合なるものに入らされていた。

組合はすべからく、政治にかかわりがあり、よってあるとき、僕は選挙活動に駆り出されることになった。

会社の先輩等を含めて数人が組合の推す"○山×男氏"の駅前にある事務所に集合した。

"○山×男氏"の選挙事務所に入ると、組合幹部A氏が僕たちを待っていた。

「皆さん、ご苦労さまです。

 今日は2チームに分かれて活動をお願いすることになります。

 『電話チーム』と『モモタロウ・チーム』に分かれてもらいます。」


適当な班分けが行われた結果、僕は「モモタロウ・チーム」に入ることになった。

ここで組合の別のBさんという人物があらわれた。

「こんにちはBといいます。

 今日は私がリーダーになって、皆さんにモモタロウをやってもらいます。

 『モモタロウ』って、わかんないかもしれないけど

 先頭の私が旗をもって、それで皆さんたち3人が一列になって続きながら

 『○山×男をお願いしま~す』って声をそろえて練り歩く、

 そんな感じです。何か質問とかありますか?」


そういうことか・・・別に質問なんかはない。

僕は旗をもったモモタロウがサル・イヌ・キジをつれて歩いているところを思い浮かべてため息をついた。

なんで僕は日曜日にこんなことをしているのだろう。

「じゃあ、早速出発しましょう。

 ルートは私の方が決めていましてね。一応、地図で見せておきましょう。

 駅前から、この道を通って、この集落と、この集落を回る予定です。

 この地区は、対立の"△川"候補の地盤でしてね。

 あまり好意的でない反応もあるかもしれませんが、

 にこやかにお願いします。」


つまりは拡声器をつけた選挙広報カーの代わりに、モモタロウ・チームが声を上げながら"○山"候補の名前を連呼するわけだ。

「あっ、それから一つ注意事項を。

 何か聞かれても、皆さんはあくまでも、

 個人的に"○山"候補が好きでこの活動をやっている、

 ということで頼みます。

 じゃあ出発しましょう!!」


好きも嫌いも、そもそも"○山"候補のことなんか全然知らんのだが・・・。

つづく




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2009/04/12

ズルズルそば同盟

どうも日本の食堂でそばを食べるときに、すっと息を吸い込みながらズルズルとそばを「すすって」いる人が減ったような気がする。

そもそも、そばはズルズルと「おいしい」音をたてて「すする」ものではなかったのか?

そばは「すすって」食すのが「おいしい」ということにはなっていたのではなかったのか?


そこで、先日、フランス人Vが日本にやってきたときに、あえて「そば屋」に連れて行った。

「今日は、日本のヌードル専門店にご案内しましょう。こっちの方向です」

「ありがとう。」

店員さんが来ると、こっちで勝手に「ざるそば」を注文。

待っている間にさっそくフランス人Vの教育に取りかかった。

「このヌードルは『そば』っていうんですけど、これを食べるときには息と一緒にヌードルを吸い込んで食べ、このときにズルズルと音を食べるのが『マナー』です。」

「オーケー、やってみるわ」

ここで、ざるそば二膳到着。

僕は、あえて大げさに音をたててすすってそばを食ったのだが、フランス人Vは抵抗あるみたいで、静かにそばを丸めて口に入れて食べていた。

まぁ、それはいい。

でも、それより気になったのは周りの日本人だ。ズルズルしている人があまりいないのである。

ということで、

全国のそば打ち男に告ぐ!!

全国の食堂で大袈裟にそばをすすり、店内いっぱいにズルズル音を響かせるのだ!!

麺のコシやら、そば比率とか、つなぎに何を使ってるか・・・そういうことにこだわってもいいけど

ズルズル食べるかどうかの方が味に影響があるのではないか!?



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2009/04/11

ヴァージン・アトランティックにバス代を請求する

あるときニューヨーク市対岸のニューアーク空港から、ロンドン・ガットウィック空港行きの飛行機を予約したが、予約当日は雪。空港まで行ってみると、雪のため機材がなく、フライトがキャンセルされていた。

カウンターに行くと、ヴァージン・アトランティックのおねえさんが言うには、近所のホテル・クーポンを渡すから明日のフライトまでそのホテルにいてくれ、とのこと。

経験上、チケットを持っていて、飛行機が飛ばないときには金がうんとかからない限り、結構いろんな要求を聞いてもらえることが多い。

なので、要求してみた。

「ホテル嫌いなんで、明日までフィラデルフィアの友人の家に泊めてもらうことにした。だから、ホテル・クーポンはいらないから、フィラデルフィアまでの電車の往復賃をくれ。」

「電車はだめです」

「どうして?」

「その替わり、バスなら出します」

「オーケー、じゃあバス賃を出すとチケットに書いてサインをしてくれ」

「チケットは回収します。その代わり、こちらのメモに書きます。」

「オーケー」

かくて、バス賃を出すとの覚えをもらった。

実は、電車はダメではバスならいいというのは、予想通りだった。

アメリカでは一般的に、下記のような値段格差があるとの認識がある。

  電車(Amtrak) > バス(グレイハウンド)

これはこれで確かに正しいのだが、しかし、この場合、実はバスよりも安いローカル電車があったのだった。

まあ、知らないのだろう。

  バス(グレイハウンド)> ローカル電車(Transit Trenton乗換 SEPTA)

もっとも、飛ばないチケットを持っていると後日フライト代の請求交渉の目が出てくる。

そういう意味ではカウンターのおねえさんはバスと電車の値段認識に漏れがあったが、押さえるところはちゃんと押さえているのだ。

かくて、このおねえさんの書いたメモを証拠に、日本にもどってからバス代の返金交渉を行った結果、
めでたく日本の旅行代理店経由で、僕はバス代・数千円の返金を受けた。

ただし、それは交渉開始から8か月後のことだった。

なんでこんなに時間がかかるんだろうねぇ。



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2009/04/10

これは差別か?

ヘルシンキで、予約していたホテルに到着したときのこと。

トランクを引きずって、カウンターまでやってくると団体でも到着したところなのか、2人ある受付にはなぜかそれぞれ10人近くも西洋人たちが並んでいた。

こちらも他にやることもないし、早くチェックインしたいので、とりあえず片方の行列の最後尾に並んだ。

受付では白人の女性が一人一人チェックインを済ませていき、15分以上も待った上で、ようやく順番が回ってきた。僕の後ろには誰もいない。

パスポートを片手に、チェックインをお願いしようとした僕は、受付のおねえさんは事務的にこう言われた。

「ちょうど交代の時間なので対応できません。」

そして彼女はすっと奥に消えてしまった。

ちょっと待て、僕のうしろにはもう誰も待っていないのである。

隣ではもう一人の男性の受付が、別の西洋人客との間で当分終わりそうもない会話をえんえんと続けていた。

これは、その場にただ一人いる東洋人への差別か?

僕はキーをもらった後、15分にわたってロビーに座りつづけ、件の女性従業員が本当に交代してしなくなったのを確認してからエレベータに乗って、部屋に入ったのだった。



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2009/04/09

混乱しながら留学寮の部屋に電話をつなぐ

留学寮に入居して直後1か月くらいは、いろいろと入居に伴う出来事があった。

電話の設置もその一つ。

寮のスイートには共用電話があり、一応外線もスイートの誰かがとって取り次いでくれることになっているが、こちらからかけることはできないし、まして日本に電話することもできない。

なので、自分の部屋に電話を設置し日本に電話をかけることができるようにしたかったのだ。

寮の部屋の壁には電話線ジャックがあり、物理的な配線はできているので、どうやら地域電話会社のベル・アトランティック(つまりntt東日本みたいなもんだが、この会社今でもあるんだろうか?)に行って、契約をすればいいらしい。

ベル・アトランティックに契約に行くと、書類記入してサインをしてテレフォンの契約はあっさり終了。

長距離電話は当時の寮生の常識に従い、コールパシフィックという太平洋を超える通話を圧倒的に割引するMCI社(この会社は今はない)を選択。

さて、契約ができたところで、気がついた。

(そういえば、受話器がない)

なので、受話器を買いに行こうと思ったのだが、ここで疑問が浮かんだ。

(『受話器』って英語でなんというんだろう?)

辞書を引いてみたがあまりよくわからない。

(さっきまでは、テレフォンがほしいといって、テレフォンの契約をしてきた。)

考えた末に、受話器は契約じゃなくて機械だから、

「テレフォンの機械(machine)をくれ」

そう言おう、そう決めて雑貨屋ウールワースに出かけ、店員に声をかけた。

「こんにちは、テレフォンの機械をください。」

「テレフォンの機械? アンサー・マシン(answering machine)のことか?」

僕は心の中で自問自答した。

(アンサー・マシンってなんだ?、受話器って、アンサーするときに使うよなぁ・・・)

「・・・はい」

「すまないけど、アンサー・マシンはないよ」

「わかりました。」

仕方なく、他の店に行ったが同じような会話を繰り返して断られ、僕は混乱して帰ってきた。

(どうして、受話器が売ってないんだろう?)

理解できないまま、留学寮近くの書店にいくと、なんと本に並んで受話器が売っているではないか!!

受話器の箱にはこう書いてある;

"テレフォン $18"


なんのことはない、契約のみならず、

受話器も単にテレフォンでよかったのだ。

ちなみに、アンサー・マシンが何ものなのかは後日知った。

  アンサー・マシン(Answering machine)の正体; 留守電

当時、アメリカでは留守電はそんなにあまり一般的になっておらず、しかも受話器とは別に留守電マシンを外付けするのが普通だった。

 (外付け留守電の接続方法)

    壁の電話線ジャック----アンサー・マシン------受話器



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2009/04/08

ガイジンにはわからない土鍋ご飯の味

あるとき、僕ら日本人数人でアメリカからやってきた夫婦を含むビジター数人を京都見物に連れていった。

清水寺やらに連れていったりしながらも、あまり寺ばかりにならないようにしながら時間をつぶし、予定通り最後に夕食として、お座敷のある和食につれていった。

アメリカ人夫婦は、とにかく座敷の衝立とか、行燈ライクな照明などにいちいち感動してくれた。

料理がスタート。

外人様なので、魚のみにならないように肉も出てくるように注文してあり、出てくる天ぷら感激してくれたり、すき焼きをとてもウマいと褒めてくれたりした。

さてここで料理のしめとして、土鍋の炊き立てご飯と京漬物が出てきた。

このご飯のおいしかったこと!!

「これいいよね~」

「しかも、このご飯に、この漬物!!」


ひとしきり、盛り上がって、ふと気がついた。

今、土鍋ご飯と京漬物に喜んでいるのは、日本人だけじゃないか!!

アメリカ人たちは先程と違って特にコメントもせずご飯を食べ終わり、なぜか急に日本人達が盛り上がっているのを不思議そうに眺めていた。

そう、ガイジンは、炊飯器ご飯と、土鍋炊き立てご飯の区別がついて、その味に感動したりはしないのである。



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2009/04/07

お国の検収

その昔、日本企業に働いていたころに一度、国から助成金なるものをいただいて、システムを納品したことがある。

一応、お国のやることですから、Web等に公開された公募説明みたいなものがあって、漢字がいっぱいの申請様式を記入して、外郭団体様にご提出申し上げるわけです。

われわれの会社のテキトーな提案は、なぜか採用されたため、僕は各種の書類様式を提出し、他方で、社内の同僚たちは提案した「世の中の役に立つシステム」を指定された締切日までに開発しました。

さて

あまたの書類作成と提出手続きを突破し、

ついに「世の中の役に立つシステム」を完成させた我々の前には、

大きな関門として、お役所によるシステムの『検収』

というどうしても避けられない手続きの日がやってきました。

僕らは会社の会議室に「世の中の役に立つシステム」をセットして、最後の審判を待つ我々。

と、『検収』する担当者としてお国を代表してやってこられたのは、

今まで、書類チェックをやってこられたのはお国のご担当者様たったお一人。

ん、書類担当者のこの人に、システムの検収なんかできるのか???

そもそも、この人、これが何に使うシステムなのかを理解しているのか???


心の中に、もたげてくる当然の疑問・・・

そうこうするうちに、ご担当者様は、われわれの用意したパソコン端末に向って一言。

「はぁ・・これがそのシステムですね」

「はい。そうです。」

「では、これから検収をします。」

「はい。で、では椅子をどうぞ。」

「いえ、すぐ終わりますから立ったままで大丈夫です。言うとおりに操作をしてください」

「はい。

 では、・・・・えーと、今見えているのが、これがあの~開始画面でして・・・」

「そうですか。どこかに日付を入力するところはありませんか?」

「ひ、日付ですか? あっ、あります。

 ここをクリックするとカレンダーが出てきますので、好きな日付を選べます。」

「じゃあ、2024年を選んでください。」

「は? 2024年ですか?」

「2024年の2月のカレンダーを出してください。」

かなり突飛な内容に面喰うが、何しろお国の検収ご担当者様に言われたことである。

僕は、言われる通りに2024年の2月のカレンダーを出した。

「出ました。」

「実は2024年はうるう年なんですが、2月29日が選択できるか操作してみてください。」

ドキリとした。

こんな先日付のしかも、うるう年に対応しているか、なんてことは全く事前に確認していない。

半ば祈るような気持ちで僕は2月29日をクリックした。

「で、できました。」

「そうですか。では、それを保存してください。」

今度はやや安心しながら、保存ボタンをクリック。

「保存できました。」

「問題ないようですね。

 はい。それでは『検収』は完了です。

 お疲れ様でした。」


は? もう、おわり・・??? とでも、言いたくなったがもちろん黙っていた。

かくして僕らは「世の中の役に立つシステム」を完成させた上に、XXX百万円という大金をいただき、日本経済の活性化に一役かったのだった。

いやぁ、世の中の役に立つって本当に気持ちいいですねぇ・・・。


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2009/04/06

ナンはお金持ち用

あるときベンガル人アーリジットといつものようにテニスの後に一緒にフードコートに入って食事をした。

今日の食い物はカレーとナンである。

ナンを食べながら、アーリジットは言った。

「ホントはな、ナンっていうのは金持ち用なんだ。」

「どういう意味?」

「海外のカレーレストランなんかにあるのはこういう柔らかいナンばっかりなんだけど、

 でも、インド国内ではナンよりもチャパティの方が普通だ。」


「どう違うの?」

「チャパティは小麦粉をこねて、鉄板の上で焼くだけ。

 これに対して、ナンはパンみたいにやわらかいだろ、

 つまり、発酵が必要だ。」


「だから、高級なんだね。」

「でも、もっと決定的な差がある。

 ナンを焼くためには、タンドーリが必要だ。

 だから、自宅でナンを食べるためには、

 まず、ちゃんとした家があって、その上でタンドーリがなければならない。

 だから、ナンっていうのは、お金持ち用。」


このときはあんまりなんとも思わなかったが、後年僕はインド旅行に行き、道端の青空の下でチャパティを焼いている人たちをみて、アーリジットがこのとき語った意味をようやく理解したのだった。



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