僕たち4人(タイ人アマンパ、韓国人ミスター・パク、日本人シンゴと僕)は、パスポート無いままカリフォルニアからメキシコ国境の町・ティファナに入ってしまい、しかも現地警官になけなし現金をカツアゲされてしまっていた。
よく考えると、よく考えなくてもかなりやばい状況である。しかもこれから夕方になってくる。
僕にはパスポートがないままアメリカがメキシコからやってくる外国人を入国させるとは思えなかった。どうなるのだろう。パスポートの再発行にはどうにも日本大使館・領事館に行く必要があるがそんなものはティファナにはないに決まっている。
つまり、かなり遠いメキシコシティーの方に行く必要があるが、このレンタカーはどうすればいいのだろう。違う場所に行くたびに白バイが現れてカツアゲされてしまってはたまらないし、だいたいもうキャッシュはそんなにない。
とにかく、来た方角の方に運転し、再びハイウェイに上がるとすぐに
"United State"
の看板が表示されてきた。
このまま来たときと同じように、通過できてしまうのか? とも思えたが、そうはなってはいなかった。
前方には、高速道路の料金所みたいな白壁にブルーの屋根の検問ゲートが20レーンほども並んでおり、それぞれに5台くらいずつ検問ゲートに行列ができていた。そのうちの一つに並ぶ。
さすがのアマンパ、ミスターパクも一言もなく黙っている。
さて順番がきて、車をゲートまで進めた。いかにもアメリカ人という感じの白人保安官が担当だ。
「ハロー、まずトランクを開けてくれ」
僕は黙って、レバーを引いた。トランクには僕らのカバンが入っているはずだ。
「荷物を出していいかな」
「はい」
「後部座席の人、降りてくれるかな」
「はい」
国境ゲートの保安官殿は、慣れたようすで後部座席をチェックし、次に運転席の僕に向ってごくごく気軽に話しかけてきた。
「じゃあ、全員のパスポートを見せてくれるかな?」
「パスポートないです」
「え、パスポートがない!?」
すると保安官殿は、車の後ろに回って、
"Gate closed"
と書かれた黄色と黒の表示を引き出して、僕らの後ろに並んでいた車に他のゲートに並びなおすように合図した。
そして、僕らの車に戻ってきてこういった。
「じゃあ、みんな車から降りて、あっちの建物に行ってくれるかな?」
こうして僕たち4人は国境保安官殿につれられて、『あっちの建物』に入ったのだった。
つづく
(次回 国境保安官事務所で八方塞がる)
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