国境保安官事務所で僕たち4人(タイ人アマンパ、韓国人ミスター・パク、日本人シンゴと僕)は、パスポートがなく、しかも現金もない状況で八方塞がっていた。
タイ人アマンパと韓国人ミスター・パクと僕は、ややシンパシーを感じてくれているようにも見える白人保安官を相手に、学生VISAのオンライン検索とその料金の支払いをめぐって、妥協点の見えない押し問答を続けていた。
問答がどうしようもない袋小路にはまっているのを否応なく全員が感じていたころ、突然、ずーっとそれまで黙っていた日本人シンゴが立ちあがってこう叫んだ。
「待ってくれ。僕は、僕はパスポートを持っている!!」
保安官さん、僕らの残り三人は全員、無言で振り返った。
そこで、シンゴは赤い日本人パスポートを差し出しながら言った。
「これで僕を通してくれ。それで僕がいったんサンディエゴに行って、みんなが必要なキャッシュを引き出してもう一回ここに帰ってくる。それでいいだろ!!」
白人保安官さんが少しほっとしたように言った。
「もちろん、オーケーだ。残りの3人はこの部屋に留まっていること。」
まさに救世主の登場だった。
こうしてシンゴは僕らの運命(?)を背負って、レンタカーのビューイックを運転してUS再入国していった。
残りの僕らは国境保安官事務所の一室で、あまり会話もしないまま、アメリカ・メキシコ国境から見える見事な赤い夕日を無力に眺めながら、約3時間ひたすらシンゴの帰りを待ったのだった。
夕日がほとんど沈みきった頃、シンゴが帰ってきた。
「みんな、お待たせ。」
学生visaの検索確認は5分もかからず終了し、あっさり全員がUS入国が認められた。
国境保安官事務所を離れる時に、あの白人保安官さんは僕らを呼びとめて諭すようにこういった。
「いいかい、君たち。アジアにはこういうことがないのかもしれないから言っておく。
国の外に出る時には必ずパスポートが必要なんだ。これからはこのことをよ~く覚えておいてくれたまえ。」
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