韓国に旅行にいったときのこと。
特に目的もなかったのだが、木浦(もっぽ)というところを目指していた。
木浦(もっぽ)は朝鮮半島の左端、つまり西南角にあり、木浦までいけば、行き着くところまで行ったことになる、という気がしたのだ。
光州(くわんじゅ)からバスに乗って、角の町、木浦を目指した。
途中の道にはあまりものがなく、信号も少なかった。
さて
木浦(もっぽ)の町について、港を一周していると温泉マークのついた「旅人宿」を発見した。
旅人宿は表通りからちょっと10メートル入ったところにあって、看板がなければほとんど普通の民家と変わらない。
ガラスの引き戸をたたいて、タタキの中に入ると、玄関に小学生高学年くらいの女の子が出てきた。
僕がたどたどしい韓国語で聞いてみた。
「ここ、旅人宿か?」
すると女の子は、なにやらいろいろ言ってくれたのだが、何を言っているのかよくわからない。
どうやら
「アジョッシ(おじさん)がいない」
と言っているようだった。
なので、僕は
「アジョッシを待つ。」
と言って、玄関に腰掛けると女の子が困ったように早口で言った。
「オッパ ×☆▽○%&■!!」
女の子が何を言っているのかはあまりよくわからなかったが、僕は「オッパ」と呼ばれたことにびっくりしていた。
「オッパ」というのは、女性のみが使う、年上の男性に対して呼びかける言葉である。
米国の留学寮でずいぶんいろいろな韓国人と接してきたが、年齢・性別によって使い分ける複雑な呼びかけ語を理解するのにずいぶん時間がかかった。
留学寮での韓国人体験の記憶を元に、図(?)にするとこんな感じだ。
男性 ----> 年上男性; ヒョン
年上女性; ヌナ
女性 ----> 年上男性; オッパ
年上女性; オンニ
しかし、留学寮中に、僕は彼らから「オッパ」呼ばわりされたことは一度もない。
逆にもし、これを使ったり、使われたりするってことは、韓国コミュニティーに入る、つまり韓国年功序列社会に組み入れられる、ってことを意味すると体感していた。
そうこうするうちに今度は問題のアジョッシ(おじさん)が帰っていた。
でも、僕の韓国語能力が低いだけなんだけど、おじさんの韓国語もよくわからなかった。
そうこうするうちにアジョッシは突然
「あいうえお、かきくけこ、おとうさん、おかあさん・・・・」
と日本語の単語を列挙して
「国民学校に4年生までいた」
と言って少し怒ったように言い、ここに行けと言わんばかりに、何かをメモしてその紙を渡してくれた。
メモの紙には、「宿の名前らしきものと電話番号」が書いてあった。
この家は「旅人宿」ではなかったのか? それとも僕は断られたのか?
なんだかよくわからんまま、僕は指定された宿に向かったのだった。
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