2009/02/17

レストラン内の小さな革命

学生だったころ、僕はいろいろなレストランでバイトをしていた。

今はなくなってしまったフレンチ・レストランでウェイターのバイトをしていたときの話。

レストランは一階と二階とに分かれていて、僕はいつも2階でレストランで最近、本店からやってきたというKさんという人の下で働いていた。

レストランの中っていうのは、通常、厨房世界と、客にサービスするホール世界とに分かれているのが普通だ。

大げさに言うと商工分離とでもいうのだろうか。

で、厨房のボスとしてシェフがいて、一方のホール世界のボスとして、「店長」がそれぞれいた。

シェフは自信たっぷり、フランス仕込みの日本人。

店長はまた、なんていうのかな、いかにももてそうな、ちょい悪系の日本人。


二人はウマがあっているようにも見え、いつも客もうまく入っていた。

さて

ある日の午後のこと、僕がバイトに店に行くと、Kさんのところに行くとこう言われた。

「あのさ、今日からさ、シェフも店長もいないから。」

「は?」

「シェフと、店長はずっと『ワインの横流し』しててな。

 いろいろ調べて、はっきり証拠をつきつけたんだ。

 だから、シェフと店長も、もう二度と戻ってこないから。」


「はい、わかりました」

いったいそれ以上何をいうことがあろう。

そういえば本店からKさんがやってきたのが約2か月前。

アクの強いシェフと店長に実直に従っているように見えて、実はKさんは、

横流し調査のために本店から送り込まれたエースだったのだ。

かくて、シェフ&店長コンビは店から永久に追放された。

店内に革命が起こったのだ。

かつて力の弱いナンバースリーとも見えたKさんは厨房世界をも統べる絶対権力者に変わった。

数か月後には、Kさんは一階の隅の席に彼女を呼び、特別料理を出すまでになっていた。

今? 跡地は全然違う居酒屋になってます。



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