留学寮に住んでいたある日のこと。
僕はなぜかとてものどが渇き、耐えかねて近所のコンビニにジュースを買いにでかけた。
コンビニの奥にあるガラス冷蔵庫のドアを開け、どれにしようか迷ったあげく、紫の100%ブドウジュースをつかんで、レジをもっていこうとしたその時だった。
ガシャーン!!
ブドウジュースの瓶は、ちょっと濡れていて、瓶は僕の手の中を滑って、床に落下して見事にこなごなになってしまった。
ガラス破片と一緒に中のブドウジュースは、あっという間にレジの前の床いっぱいに広がっていた。
うぅ・・・まずい・・・どうしよう。。。
が、ふと顔をあげるとレジの中では、黒人のおにいさんが頬杖をついて、身動きもせずに、つまらなそうに広がったジュースを眺めている。
まるで、まったく他人事みたいだ。
レジのおにいさんからのリアクションが全然ないので、どうしようかと僕は突っ立っていた。
と、今度は奥から、音を聞きつけてやってきたのか、別の黒人の掃除夫(Janitor)さんがモップとバケツをもって現れ、僕には一瞥もせず、もくもくと床に広がったジュースを拭き取り始めた。
うーん、どうやら割れたジュースについての対価を僕に求めてくる人は誰もいないらしい。
そこで、僕は心を決め、なるべくなんでもなかったかのように
「ソーリー」
と小声でいい放ち、別のジュースと、罪滅ぼしに予定になかった食パンを買って帰ったのだった。
でも、きっとこんな演技は誰にも届いていないんだろうなぁ・・・。
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