日本企業にいたころあるとき、僕はなぜか会社の成り行きでこんなことを言われた。
「なんでもいいから特許になるようなアイディアを考えて出せ!!」
「あのー、僕は技術屋じゃありませんけど・・・」
「いいんだ。素人でもビジネス・ニーズから特許になることもあるんだ。」
無茶苦茶というか無謀とも思える内容だが、とにかく上司の指示である。
とにかく何かはやらないといけなくなったので、いろいろ考えてこういうタイトルのものを書いた。
「画面の机」
さて、このネタはそのまま特許チームに提出され、数日後、僕は、特許チームに呼び出された。
会議室の向いには、口からしゃべる内容がそのまま書面になりそうなカタイ感じの特許担当者。
「さて、この『画面の机』を提出いただいたんですが、いろいろな不明点がありまして、この内容について具体的に説明いただけませんか?」
かなり不安を感じつつ説明する。
「あのー、僕はほしいものを書いたんです。仕事で、
いろんな書類を机の上に並べて確認していることがよくあるんですけど、
そこで、机自体が画面になっていたら、いいなと思ったんです。
もし、その『画面の机』があれば、その机になっている画面の中に
必要な書類を表示して、それを指で指したりしながら、その画面内で
修正をタイプできると便利だな、と。」
特許屋さんは、この話を至極まじめに聞いてくれ、そして言った。
「なるほど。
画面は大きくて、しかも机の面になっているということは、
どうしても一定以上の強度が必要ですね。」
「はぁ!?」
「しかも、画面ですから、当然、透明な板ということになりますね。」
「はぁ、たぶん、そういうことになりますねぇ・・・」
「一定以上の厚みのある透明な板の上から、
その下のパソコンからの表示内容を上から指で指す、
ということは、入射角等の問題で、
指の位置と画面の位置がどうしてもずれてしまいますね。
この問題をどう解決しましょう?」
そんなこと言われても知らないよぅ、と僕は思った。
画面を机にするということだけなら、大昔に喫茶店等にあったインベーダ・ゲームもそうだろうから特許担当者は指でさして修正する、という点に「新規性」を見出したのかもしれなかった。
だが、なんにしてもこの点において、「画面の机」には根本的な問題があったのだ。
そもそも特許とは、「ほしいもの」を書いてもそれはそれでいいのだが、
いずれにしても
「それを実現する方法」を書く必要があり、
その「実現する方法」自体が特許なのである。
僕は、単に「ほしいもの」を書いたのみだったため、このような技術的・具体的な実現方法について聞かれても全く答えられない。
あたりまえの結果として、「画面の机」はそのままボツ。
でも、10年以上経過し、「画面の机」のアイディアのうち、画面を指で指して画面上の書類を動かす、っていうところは最近iPhoneで実現した。
しかし、画面全体を机にしようという発想は、きっと僕以外の人も多数の人々が絶対思いついているに違いないのだが、そういう製品が出たという話はいまだに聞かない。
きっと、あの特許屋に言われた入射角うんぬんの技術課題が解決していないに違いない。
とにかくいつか将来、「画面の机」が完成された暁には僕はこう語るつもりだ。
「あれね、僕が考えたんだよ。実現方法以外はね。」
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2 件のコメント:
画面の机。
片付けが苦手な人は、やっぱり階層が深そうww
画面の中に書類の山!?
あっ、映画だったんですね。
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