トルコ石工房と同様に、今度も日本語の達者なマネジャー、イブラヒーム氏が現れて歓待してくれた。
一応、順路が決まっているらしく、奥の部屋に進めてくれる。
ここでは設計書を見ながら、タテ糸にパイルとなる糸を手作業で結んでははさみで切る、という作業をおばさん、おねえさんがしていた。
この作業を終えて、一枚のじゅうたんを完成されるのに、数ヶ月かかるらしい。
「一番いいのは13-18才の女の子デース」
なんて言っていたが、こんな大変な作業は、若くないととても続かないに決まっている。
「このあたりの女性は、じゅうたんを完成させて、それを嫁入りにもって行きマース」
などと言う。
次の部屋では、ヨコ糸となるべきシルク糸を繭からゆでてとったり、壁に結んだ糸をぐるぐる手で回して、撚りを掛ける木製の道具などがあった。
展示されているというより、実際に作業している横を歩いて、通りすぎる、という感じだ。
入り口近くの大きな部屋に戻ってくると、イブラヒーム氏は一言。
「ドーゾ、イスに掛けてクダサーイ。」
メグミとともに、一応、座る。
「コレは、カッパドキアの名物、カッパドキア・白ワイン、デース。ドーゾ」
まずは、グラスを一杯ずつ渡された。
僕らが、ワインに口をつけたところで、イブラヒーム氏のご講義が始まった。
「一口にウールと言っても、イロイロ、アリマース。」
そういって、サンプルのウールを手渡された。
「コレハ、足のケから取ったもの、デース。 触ワッテ見てくだサーイ。
堅いデショウ。」
次に別のサンプルを渡された。
「コレハ、首のケから取ったもの、デース。 触ワッテ見てくだサーイ。
トテモ、柔イデース」
うん、確かに。こっちのほうが全然柔らかい。
説明によると首の下〔あごの下というべきか〕が最高級のやわらかいやつで、背中の毛が普通のレベル、そして、足の毛が一番堅いということらしい。
よし、それはわかった。
パチリ!!
イブラヒーム氏が指をならすと、左右の手で丸めたカーペットをかかえた、丁稚とでもいうべき少年3人がやってきて、それぞれバッと僕らの前に広げはじめた。
巻いてある書き初めを、両端をもったまま伸ばして見せてくれる感じ。
「コレハ、ヘレケという名産地からのモノ、デース
ドレガ好きデスカ?」
パチリ!!
「コレハ、また別の産地のモノデース。
ドノ柄が好きデスカ?」
イブラヒーム氏は、僕らが、こんな高額なものがそうそう買えると思っているのだろうか?
すると、僕らの思いが伝わったかのようにこんなことを言う。
「新婚サンには、特別に15%割引 シマショー」
だいたい元の値段があやしいのに、割引ねぇー。
パチリ!!
「コレハ、見ル角度によって、光沢がカワリマース。 ホラ、コンナ感じニ。
ドノ柄が好きデスカ?」
僕らの反応があまり芳しくないのを見て、店主殿、今度はこんなことを言い出した。
「カーペットのウラにサインをしてクダサーイ。
チャント、日本に同じモノ、トドキマース。
ダイジョーブ、デース」
なんだ、そんなひどいインチキもあるのか。
しかも、この「ダイジョーブ・デース」というセリフはどっかで聞いたばかりのような気がする。
おっさんと丁稚のコンビネーションによるすばらしいデモ講義はえんえんと続いて終わりそうもないので、僕はこう言ってみた。
「あのね、うちは畳敷きだからね、カーペットを敷くような床がないんだよ。」
すると、イブラヒーム氏は今度は、イスの横からさっとなにやら取り出した。
「コレハ、電話の下に敷くシキモノ、デース
ドレガ好きデスカ?」
彼の商売ルーチンは、まだまだ続くのだった。
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シルクカーペット
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