あるとき会社がビルの引っ越しをすることになった。引っ越し先は新築の高層ビル。
なぜか僕は引っ越しの担当を仰せつかり、完成間近の引っ越し先ビルの様子を見に行くことになった。
新築ビルの入り口を入ると中ではまだ内装工事がまだ続いている。
エレベータで、引っ越し先のフロアへ。
内装工事の終わった入居先フロアに一歩入るのとひときわムンと熱気が伝わってきた。
あ、暑い!!
内部を見て歩きまわると2分もたたないうちに息苦しくなってきた。
そもそもオフィスビルっていうのは、大人数がパソコンだのコピー機だのをつけて、狭い場所に折り重なって入っているのがオフィスビルであって、しかも太陽にばっちりあたる高さにあって、それがコンクリの塊なのだ。
そして、体で悟った。
「オフィスビルっていうのは、常にエアコンが回っていることを前提としているのだ。」
一瞬でも早く出たい入居先の事前確認を終わったところで、案内してくれた方がこんな申し出をしてくれた。
「屋上に非常用のヘリポートがあるんですが、こんな時しか見せられないんですが、見ます?」
うっ・・・確かに屋上ヘリポートに行った話は聞いたことがない。
「あっ、はい。見たいです。」
案内人に従い、エレベータで最上階にあがりそこからさらに非常用の階段を上り、さらに梯子を上った上に、屋上のフタがあった。
「そこのフタを下から押してください。」
ちょうど地下の土管から、マンホールを下から押し上げて、地上に出るような感じ。
明るくまぶしいフタの穴から、頭を出したとたん
ビュー
ものすごいスピードの風があたり、びっくりして頭を引っ込めた。
あたりまえかもしれない・・・高層ビルの屋上が無風のわけないのだ。
もう一度、覚悟を決めて、穴の淵を手をつかみ、胸まで出して周囲を見まわした。
やっぱりすごい風!!
これ以上体を出すと、風に体を流されて持っていかれそうである。
見まわすと、確かに平らでグレー塗装された屋上にはヘリポートを表すらしいマークが黄色で書いてある。
が、そのヘリポートの端には柵らしきものが一切ないのだ。
僕は頭の中で、この暴風の中に立ちあがったとたんに風に流されて柵のないヘリポートからあっという間に滑り落ちる恐怖の図を思い描いてしまった。
この穴から、ヘリポートの端まで10メートルくらいか・・・。
もしヘリポートの端から落ちたら、そのままビルの屋上からまっさかさまだ・・・。
いったい、もしビルが火事になったら、そんな非常事態になったら、
この暴風の屋上ヘリポートの上に、人はまっすぐに立ち止まり、
しかも上からやってくるヘリコプターに手を振ったりできるんだろうか?
結局、僕は怖くて腰までしか穴から出せず、ビルの人には適当に納得した旨、コメントして帰って行ったのだが、今でもビルの屋上ヘリポートはきっと使えないような気がならないままなのである。
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