ある日のこと。
僕は留学寮近くのフードコードで日本人ヨシコと一緒にランチボックスを食べていた。
そこに通りがかったのは寮で僕と同じスイートに住んでいる韓国人のヒョンエル。
ヨシコと僕は、日本語でとりとめもない会話をしていたのだが、ヒョンエルは同じテーブルの空いた席に座り、黙って僕らの日本語会話を聞き始めた。
それは、ちょうどヨシコが話終えたときのことだった。
「・・・・ということになったの。」
急にヒョンエルが完璧なイントネーションの日本語で叫んだ。
「ほんと!?」
思わず、ヨシコと僕はびっくりして、ヒョンエルの顔を見つめた。
「・・・・・」
すると僕らの表情を見て、ヒョンエルは一人大笑いし始めた。
「ハッハハハ!、ハッハハハ!!・・・」
明らかに一杯食わされた感じである。だいたい彼が日本語をできるはずがない。
わかっていながら、聞いてみる僕。
「ヒョンエル、どういうことなんだよ!?」
まだ、笑いながらヒョンエルが白状を始めた。
「ソーリー。
昨日、日本人シンゴに教えてもらったんだ。
日本人が会話しているところで『ほんと!?』って叫ぶと面白いって。
英語でいうと"Really"っていう意味なんだろ。」
すっかり、うまいことやられたが、これって日本語でなくてもできるに違いない。
「ところで、韓国語で"Really"ってなんて言うんだ?」
彼は、僕の逆襲プランをすぐに察したようだった。
「韓国語では、『チョンマル!?』っていうんだ。」
早速言ってみる。
「ちょんまる」
「ちょっと、だめだな。語尾の『る』は英語の"L"の発音だ。
もう一回やってみろ」
「チョンマル!?」
「いいね、そんな感じ。
オレの『ほんと!!』もシンゴに練習してもらったんだ。
それじゃあ、また後でな」
ヒョンエルは満足して去って行った。
さて、その日の夕方のこと。
割と仲の良かった韓国人マイラが、別の韓国人二人と寮の一階で雑談しているところを発見。
こっそり近づいていって、マイラのセリフが切れたところで言ってみた。
「チョンマル!?」
一瞬、韓国女性のびっくりしたような顔が三つならんだ。
が、僕の顔を見てか、たぶん見てなくても、マイラは事態を察して言った。
「あなた、韓国語わかってないでしょ~?」
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