2009/06/11

トルコ・チャイで作る三段バルコニー

夜、カッパドキアのホテルの中をメグミと一緒に歩いていると、オープン・スペースのテーブルで、ガイドのTがチャイを飲んでいた。ここでいうチャイとはもちろんトルコ・チャイである。

ちょうど夕食を終えた後だそうで、Tはチャイのグラスを片手で持ちながらこう聞いてくれた。

「トルコでは、食後にはチャイがなければなりません。

 あなた方もいりますか?」


「うん。ちょうだい。」

すると、Tは今まで話をしていた男に一声かけ、なにやら合図をした。同席してTと雑談していた男はおそらくホテルの従業員なのだろう。

ほどなくして、男はメグミと僕のためにチャイを2杯もってあらわれた。

デミタスと同じくらいの直径の小ぶりな銀のソーサーの上に、透明なガラスのみでできた独特のくびれたグラスが載せられ、その中にチャイが8分目まで入っている。

「さあ、どうぞ」

Tはまるで、自分が用意したようにチャイを勧めた。

「えーと、砂糖はどうしようかな?」

ソーサー手前のミニスプーン上にある二つの角砂糖を見ながら迷っているとメグミが言った。

「最初から十分入ってて甘いよ。昨日のランチのチャイもそうだった。」

「うん、そうだね」

まず、そのまま飲んでみる。

熱い。それに味が濃くて、しかも、かなり甘い。

不思議なことに、日本にいるときにはこんな甘い紅茶を飲んだりしないのだが、ここトルコにいるとこの甘さがうれしく感じてしまう。

Tがこういった。

「ワタシは、いつも砂糖を2つ入れマース」

トルコ・チャイは、煮出し紅茶である。

日本の標準的な紅茶からすると濃すぎて苦いものをベースにしており、最初から砂糖を入れることを前提にしている。(日本にあるトルコ・レストランではしばしば砂糖無しのストレートでチャイが出てくるが、現地では最初からかなり甘い状態で出てくる。)

と同時に、甘さの調整は飲む人が個人の好みでやることになっている。

ルールのように書くとこんな感じだ。

 手順1. 砂糖を1つ入れて、かき混ぜる

 手順2. 味見をする

 手順3. そんなに味は変わらないので、1に戻る


ガラスの容器を触ってもわかるが、チャイはたぶん日本の紅茶より温度が高くとても熱い。

温度がとても高いためか、上のような手順1-3を何回繰り返しても、あーら不思議、角砂糖はすべて溶けてしまう。

僕はTの勧めに従って、小さなチャイグラスに角砂糖2つを入れてかき回して飲んだ。

お茶としての飲む量がとても少ないのに、苦みも甘さもとても濃く、何かのエキスを吸っているような感じだ。

メグミは砂糖1つを入れたチャイを飲みながら言った。

「これを毎食後に飲んだら、絶対太るわね」

するとTがこう答えた。

「それをチャイ腹といいマース。

 トルコでは

 『チャイ腹のない男は、バルコニーのないマンションみたいなものだ』

 という言葉もあります。」


なるほど、イスラム圏だから酒はないし、男たちは食後にチャイ、集まってはチャイ、でチャイ腹になるわけか。

そう考えながら、思い出して見れば、Tと一緒になってこの旅行をアレンジしてくれている運転手のF氏はかなり立派なチャイ腹だ。

うん、Tはまだ若いからはチャイ腹ではないが、F氏は立派な三段バルコニー付き。



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