2009/06/30

良い空港についての疑問

最近、思うのだが成田にしろ、関空にしろ日本にある大空港の建設にあたっては、バックにある種の盲目的な信仰があるのではないか、と疑っている。

僕が疑っているその信仰の内容とは

「本格的な良い空港において、すべての飛行機乗降において、空港ターミナルと飛行機に間は、可動式の渡り廊下でつながなければならない。」

というものである。

ところが、先日、評判が比較的良いとされるヘルシンキのヴァンター空港を使ってみて、この独自信仰についてどうも疑問に思い始めた。

すべての飛行機を可動式の渡り廊下でターミナルにつなぐためには、下記のようにどうしてもターミナル自体が横に長くならざるを得ない。


   飛行機   飛行機   飛行機   飛行機   飛行機
    |     |      |      |     |
--------------------------------------------------------
ターミナル
--------------------------------------------------------

この「横長問題」を解決するために成田も関空も、シャトルなる無人電車を走られることになっているのだが、乗客としてはいちいちシャトルに乗り継いだりするのは不便だし、いったんシャトルに乗ってしまうと、もう元の買い物ゾーンにも戻れない。

ヴァンター空港では、こんな横長の構造はなくターミナルはシンプルだ。

その代わりに、建物と飛行機の間は、可動式渡り廊下ではなくバスで移動することになるけれど、シャトルに乗ったりするのと別に違いは感じない。

だから、日本の空港でシャトルのような大げさな仕組みを作ったからといって大した意味はないとも思うのだが、この考え方は何か間違っているんだろうか?


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2009/06/29

「コーイチロー」と言えなかったアメリカ人

留学寮に新しく、コーイチローという名前の日本人がやってきた。当然、名前の通り男である。

さて

コーイチロウ、留学寮の事務所で働くアメリカ人マリアンのところで、契約手続きをやったのだがいろいろ面倒なことがあったらしい。

その後、マリアンはコーイチローを覚え、彼に会うとあいさつをした。

「ハーイ、コ・イチロー!!」

しかし、コーイチロー本人は、どうしてもこの

『コ・イチロー』

というアメリカ人式の自分の名前の発音が気に入らなかったらしい。

「ノー。僕の名前は『コーイチロー』だ。」

「ごめんなさい。『コ・イチロー』」

「ちがう。『コーイチロー』だ。」

「ソーリー、『コ、イチロー』」

マリアン的にはかなり努力しているのだが、音が伸びていないので確かにひらがな的には合っていない。

これをコーイチローは容赦しなかった。

「いやちがう。『コーイチロー』!!」

結局、マリアンはさんざん言いなおしをさせられたあげくに最後までOKをもらえなかった。

コーイチロー!! 契約の仇をこんなところで取るなよ!!


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2009/06/28

「ほんと!?」と叫ぶ韓国人

ある日のこと。

僕は留学寮近くのフードコードで日本人ヨシコと一緒にランチボックスを食べていた。

そこに通りがかったのは寮で僕と同じスイートに住んでいる韓国人のヒョンエル。

ヨシコと僕は、日本語でとりとめもない会話をしていたのだが、ヒョンエルは同じテーブルの空いた席に座り、黙って僕らの日本語会話を聞き始めた。

それは、ちょうどヨシコが話終えたときのことだった。

「・・・・ということになったの。」

急にヒョンエルが完璧なイントネーションの日本語で叫んだ。

「ほんと!?」

思わず、ヨシコと僕はびっくりして、ヒョンエルの顔を見つめた。

「・・・・・」

すると僕らの表情を見て、ヒョンエルは一人大笑いし始めた。

「ハッハハハ!、ハッハハハ!!・・・」

明らかに一杯食わされた感じである。だいたい彼が日本語をできるはずがない。

わかっていながら、聞いてみる僕。

「ヒョンエル、どういうことなんだよ!?」

まだ、笑いながらヒョンエルが白状を始めた。

「ソーリー。

 昨日、日本人シンゴに教えてもらったんだ。

 日本人が会話しているところで『ほんと!?』って叫ぶと面白いって。

 英語でいうと"Really"っていう意味なんだろ。」


すっかり、うまいことやられたが、これって日本語でなくてもできるに違いない。

「ところで、韓国語で"Really"ってなんて言うんだ?」

彼は、僕の逆襲プランをすぐに察したようだった。

「韓国語では、『チョンマル!?』っていうんだ。」

早速言ってみる。

「ちょんまる」

「ちょっと、だめだな。語尾の『る』は英語の"L"の発音だ。

 もう一回やってみろ」


「チョンマル!?」

「いいね、そんな感じ。

 オレの『ほんと!!』もシンゴに練習してもらったんだ。

 それじゃあ、また後でな」


ヒョンエルは満足して去って行った。


さて、その日の夕方のこと。

割と仲の良かった韓国人マイラが、別の韓国人二人と寮の一階で雑談しているところを発見。

こっそり近づいていって、マイラのセリフが切れたところで言ってみた。

「チョンマル!?」

一瞬、韓国女性のびっくりしたような顔が三つならんだ。

が、僕の顔を見てか、たぶん見てなくても、マイラは事態を察して言った。

「あなた、韓国語わかってないでしょ~?」


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2009/06/27

「山」一字のみ漢字を知っているアメリカ人

アメリカ人マリアンはあるとき、さも重要なことを知っているように僕に向かってこう言った。

「私も漢字を一つ知っているの。しかも、中国でも日本でも同じ文字。」

こういう話は、日本人としてやっぱりちょっとはうれしい。

「なんていう字を知っているの?」

「それは、『山』という字。書き順も覚えてるの。見てて」

彼女はそういって、近くにあった紙にペンで「山」とたどたどしく書いて見せてくれた。


  山


「うん、あってる。しかも確かに書き順もパーフェクトだ。」

マリアンは続けた。

「覚えやすかったんだ。この字。山の形そのままだって教わったんだ。」

そういって、マリアンは漢字の周りを縁取るように山の絵を描いた。

確かに山っていう漢字は、象形文字であって山の形をそのまま字にしたことになっているので反論のしようがない。

でも、僕はどうも気になった。

マリアンの頭の理解では、すべての漢字は象形文字でできていて、ヒエログリフやもしかするとラスコーと同列になっているんじゃないかと・・・。

考えすぎだろうか?


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2009/06/26

女性にも干支を尋ねるフランス人

会社にいたフランス人A、あるときに日本には干支というものがあることを知り、かつ個人がそれぞれ生まれた年によって、干支の一つが割り当てられていることを知った。

当然まず知りたいのは、自分自身の干支。

彼は自分自身が「ネズミ年生まれ」であると、教えられて、誇らしげに

「そうか、僕は日本のゾーディアックではネズミなんだ!!」

と思ってくれたわけだ。

ところが、フランス人Aはつい面白くなってしまったのか、周りの日本人にも干支を尋ね始めたのだ。

たとえばこんな感じに。

「ねぇ、君のゾーディアックはどれかな? 僕のはネズミなんだけどね!!」

「私は、ウマです。」

などと無害な会話が行われた。

そこまではまあ、良かった。

しかし、フランス人Aはこれを周りの女性社員にもやってしまったのだ。

まず、被害にあったのが近くにいた日本人Mさん。

彼女はあまりに無邪気に聞いてくるので、ためらいつつも干支を答えてしまったらしい。

次の日から、フランス人Aの会話バリエーションはこんな風に増えていた。

「ねぇ、君のゾーディアックはどれかな? 

 えーっと、僕のはネズミで、Mさんのはトラなんだけどね!!」



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2009/06/25

チップ感を失い、タクシー運転手ににらまれる

普段、日本に住んでいてしばらく海外に出ないでいると、どうしてもチップの感覚が失われてくる。

あるときしばらくぶりにUKに出張し、空港からタクシーに乗ったときのこと。

大抵、日本から欧州に飛行機で到着するときには、かなり疲れているものだ。
一応、意識的に空港で両替をして、タクシーに乗ったからポンドは持っている。

多少、運転手と他愛もない雑談をして、約20分後に予約しているホテルについた。

「ありがとう。」

運転手はそう言っている間にも早速、車を降りてトランクに入った僕の荷物を出してくれようとしている。

「いくらだい?」

トランクを差出ながら、運転者さんは言った。

「21ポンドだ」

ここで、財布を出して両替したばかりのポンド札を確かめながら僕は25ドル札を出した。

「はいよ」

運転手は何かを待つようにゆっくり、コインを数えて、1ポンド玉4枚を返してきた。

ここで、僕は感覚ボケもあってそのままそのコインを受け取ってポケットにいれて

「ありがとう」

といった。

すると、運転手はちょっとにらむような顔をして、

「サンキュー」

といって車で去って行った。

あっ、悪いことしたな・・・と思ったのだが、すでに遅し。

本当は、お釣り4ポンドだ、と言われたときに

「1ポンド取って」

とか、気のきいたことを言ってやれば良かったのだが・・・。

普段の感覚がないので・・・というのは言い訳かな?


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2009/06/24

屋上ヘリポートの恐怖

あるとき会社がビルの引っ越しをすることになった。引っ越し先は新築の高層ビル。

なぜか僕は引っ越しの担当を仰せつかり、完成間近の引っ越し先ビルの様子を見に行くことになった。

新築ビルの入り口を入ると中ではまだ内装工事がまだ続いている。

エレベータで、引っ越し先のフロアへ。

内装工事の終わった入居先フロアに一歩入るのとひときわムンと熱気が伝わってきた。

あ、暑い!!

内部を見て歩きまわると2分もたたないうちに息苦しくなってきた。

そもそもオフィスビルっていうのは、大人数がパソコンだのコピー機だのをつけて、狭い場所に折り重なって入っているのがオフィスビルであって、しかも太陽にばっちりあたる高さにあって、それがコンクリの塊なのだ。

そして、体で悟った。

「オフィスビルっていうのは、常にエアコンが回っていることを前提としているのだ。」

一瞬でも早く出たい入居先の事前確認を終わったところで、案内してくれた方がこんな申し出をしてくれた。

「屋上に非常用のヘリポートがあるんですが、こんな時しか見せられないんですが、見ます?」

うっ・・・確かに屋上ヘリポートに行った話は聞いたことがない。

「あっ、はい。見たいです。」

案内人に従い、エレベータで最上階にあがりそこからさらに非常用の階段を上り、さらに梯子を上った上に、屋上のフタがあった。

「そこのフタを下から押してください。」

ちょうど地下の土管から、マンホールを下から押し上げて、地上に出るような感じ。

明るくまぶしいフタの穴から、頭を出したとたん

ビュー

ものすごいスピードの風があたり、びっくりして頭を引っ込めた。

あたりまえかもしれない・・・高層ビルの屋上が無風のわけないのだ。

もう一度、覚悟を決めて、穴の淵を手をつかみ、胸まで出して周囲を見まわした。

やっぱりすごい風!!

これ以上体を出すと、風に体を流されて持っていかれそうである。

見まわすと、確かに平らでグレー塗装された屋上にはヘリポートを表すらしいマークが黄色で書いてある。

が、そのヘリポートの端には柵らしきものが一切ないのだ。

僕は頭の中で、この暴風の中に立ちあがったとたんに風に流されて柵のないヘリポートからあっという間に滑り落ちる恐怖の図を思い描いてしまった。

この穴から、ヘリポートの端まで10メートルくらいか・・・。

もしヘリポートの端から落ちたら、そのままビルの屋上からまっさかさまだ・・・。

いったい、もしビルが火事になったら、そんな非常事態になったら、

この暴風の屋上ヘリポートの上に、人はまっすぐに立ち止まり、

しかも上からやってくるヘリコプターに手を振ったりできるんだろうか?


結局、僕は怖くて腰までしか穴から出せず、ビルの人には適当に納得した旨、コメントして帰って行ったのだが、今でもビルの屋上ヘリポートはきっと使えないような気がならないままなのである。


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2009/06/23

島内唯一の「教育用」信号機

ずいぶん昔のことなのだが、僕は小笠原諸島の父島に行ったことがある。

実は小笠原・父島というところには飛行場がない。

だから、父島に行くにはちょっと飛行機で、というわけにはいかず、必ず船で行くことになる。

東京・竹芝桟橋から、「おがさわら丸」という白い客船に乗り、えんえんと14時間の太平洋縦断大航海を経てようやく父島の中心・二見港というところにつく。

当時は衛星テレビもなかった。

おがさわら丸で伊豆諸島に沿って南下をして、八丈島をすぎるあたりまではテレビが映るのだが、それ以降はテレビも映らず。

だが、太平洋の真ん中を航海している頃、僕は船酔いに苦しみどっちにしてもテレビを見る余裕もなかった。

25時間の航海で、僕が酔って吐いた回数; 14回・・・あ~苦しかった。

船って、電車や車みたいに酔ったからって、止めたり降りたりはできないのだ。

ようやくへろへろになって到着した父島・二見港は南国らしい素晴らしい快晴だった。

二見港では群青色の「ははじま丸」が泊まっていた。

母島に行くにはここから更に「ははじま丸」で2-3時間かかるらしいが当分、船はこりごりだ。

おがさわら丸を降りた二見港の前には確か「おみやげ店が2店」あるきりだった。

記憶にある限り他に店らしき建物は全くない。(今はもっとあるに違いないが・・・。)

あまり建物もない二見港の前のT字路、といっても島を周回する道路から一本だけ2軒目の土産店まで伸びる約20mの分岐があるだけなのたが、そこにはやや場違いとも見える信号機が一本立っていた。

「こんなところに信号要るんですかねぇ・・・?」

すると意外な返事が返っていた。

「ここにあるのは小笠原諸島にある、唯一の信号機なんだ。

 小笠原の子供たちには、本土にいっぱいある『信号機』っていうやつを、

 これで教えるんだ。」



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2009/06/22

開と閉、あるいはPushとPull

ビルのエレベータのドア操作のボタン表示にはいろいろなものがあるが、僕個人の感覚にフィットするのは絶対的に「開」と「閉」である。

ところが、最近のビルでは、この「開」と「閉」という表示がだんだんなくなってきた。

中国人Sにこの話をすると、彼はこうコメントした。

「ボタン表示が、『開』とか『閉』では、漢字が読めない人にはぜんぜん意味不明だからだよ。

 字もかなり似てるしね。ま、オレは中国人だから困んないけど。」


うーむ、確かにそれはそれでわからないこともない。

「漢字じゃないのはまあ仕方がないとして、三角を二つ書いてオープン・クローズを表しているあのマークは分かりにくくないか? 見ようによっては、どっちとも取れて僕はいつも混乱してるんだ」

「それだったら、位置で覚えるんだな。

 右側が常に『開く』だ。」
 (本当は左か?)

そうかぁ・・・位置が一緒なのか・・・。

そうこうしているうちに、その昔、留学寮にいたブラジル人ベロニカとの会話を思い出した。

あるときベロニカがこんなことを言っていたことがあった。

「ビルの入り口のドアに "Push" とか "Pull" とか書いてあるでしょ、あれが私にはいつも混乱の元なのよ。」

「どうして? わかりやすいと思うけど」

「ブラジルではね、引くときが"Push"なの。だから、"Push"って書いてあるドアを見ると、引くんだったか、押すんだったか、いつも混乱しゃうのよ~。」

(この話・・"Push"じゃなくと、"Pull"だったかもしれません。なにせ、かなりうろ覚えなので・・・。)



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2009/06/21

屋外カフェのオリジナルは?

屋外カフェについて、以前にこんな記事を書いたことがある。

屋外カフェに居座るのは好き?

あるとき、ニュージーランド人Dと屋外カフェについて話をする機会があった。

「ニュージーランドにも、屋外席っていうのがよくある。」

Dがこんなことを言い出したので、僕は以前の会話を思い出しつつ言った。

「屋外に席を作るのは、フランスが元なんじゃないか?

 フランスのスタイルがだんだん、植民地政策とか人の移動で受け入れられていって、

 その結果、ニュージーランドでも屋外カフェができた、とか・・・」


するといつもは温厚なニュージーランド人Dは突然、くわっを目を見開き、気分を害したようにこう言った。

「その考えに強く反対する!!」

その日、Dの態度に気合負けした僕は、その続きを聞くことができなかったが、といって、Dは屋外カフェがニュージーランド等で、独自に発生した、というような話や根拠を示してくれたわけでは全くない。

誰か、この疑問に答えてくれる人はいないだろうか?


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2009/06/20

助手席なんて要る?

勝手な想像にすぎないことだが、僕はもし日本人が「自動車」なるものを最初の発明・創造していたら今のようなものにならなかったのではないか、と考えている。

今、全世界の世間一般で使われている「自動車」って、僕の目からみると何かが変だからだ。

なにが変って、自動車って座席が左右非対称じゃないか!!

これは絶対に「変」!!

横にわざわざ助手席なるものを作ることで、運転席が車の中心に来ない、というのはどうしても乗り物の構造として違和感がある。

もし日本人が「自動車」なるものを最初に発明・創造していたら、きっと車体前部の中心に一人掛けの「運転席」のみがあり、後ろの二列目以降に乗客席とか荷物台が据え付けられたに違いないと思うのだ。

ところで、現代って、

田舎にいくとすでに世の中すっかり自動車社会になっていて、車が一人一台あるような状況も珍しくない。

そこで「思い出す」こと。

自動車には本当に「助手席」なんてものが必要なのか?

だから、そのうちにきっと、助手席もなくて、運転席が中心にあるから運転しやすくて、一人乗りの「超・軽自動車」なるものが一般化するんじゃないかなぁ・・・なんて思ったりするわけです。

でも、もしかして運転席が中心にあることは道路法規に反することだったりして。。。



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2009/06/19

「彼はストラテジックだから・・・」

外資の会社に何年かいると、その間におのずと何人ものエクスパットが次々と3年周期くらいで日本にやってきて、去っていくのを見ることになる。

新しく来たエクスパットは、個人の色を出すのが仕事と言わんばかりに、前任者否定を次々に行い、それぞれ「自分流」を下に押しつけることになる。

良い悪いは別にして、それぞれ個人でやり方が全然異なるのは間違いない。

さて

いろいろと細かいことに口を出すエクスパットや、あまりそうでないエクスパットがある中で、

「彼はストラテジックだ」

と評された人物Jがいた。

表面的にこの文言をとると、

「大局的な観点から方針の変更などについて指示する」

ということなんだろうが、日本企業から来た僕には、ちょっと違うニュアンスを感じていた。

仮にエクスパットJが、日本企業にいる役員だったとして、下から何と言われるのか、というと;

「あの人は細かいことは言わない」

ないしは

「あの人は、チェックが甘いから大丈夫」

のどちらかになると思う。

どっちが使われるかは、人間関係と状況次第だ。

もしかすると、日本の会社では平社員からは、役員でさえもストラテジーの決定を行うとは思われておらず、課長の延長のような細かなチェックを行うのが仕事と思われているのだろう。

それはそれとして、

「あの人は細かいことは言わない」

と言いたいときには、その替わりに

「あの人はストラテジックだから・・・」

というような婉曲表現をしてみるのもいいかも。


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2009/06/18

バンダリズムとは

ある日の朝のこと、いつものように会社に行くために家を出たときのことだった。

僕は近所の駐車場を借りて車を置いていたのだが、ふと歩きながら駐車場を見ると、僕の車の後ろガラスは棒か何かに殴られたかのように粉々に割れ、ガラス片があたりに飛び散っていた。

いったい何があったのだ!?

高級外車ならいざ知らず、10数年落ちの国産セダン。

CDはおろか、カーナビもついていないのに・・・・。

瞬間、フィラデルフィア西部の路地で見かけたガラスの割れた車たちを思い出した。

これらの車はガラスが割られた後に、茶色の段ボールでガラスの代わりに窓をふさがれ、そして段ボールの表面ではマジックでこんなことが書かれていた。

"No Radio, Nothing!!"

つまり、ガラスを割っても何も得るものがないよ、というアピール。

僕の車には一応、さすがにラジオくらいは付いていたが、駐車場内にはもっといい車や、いい装備の車ばかりが並んでいる。

なのに、どうして!?・・・・

物取り目的ではないとすると、僕を特定しての個人的ないやがらせか?・・・・・


翌日のこと。

その当時通っていたフランス語のクラスに行き、フランス人Eに車を壊された話をすると彼女は全く驚いた様子も見せずにこう言った。

「それは、バンダリズムね」

「バンダリズム?」

「そう、バンダリズム。

 フランスにもよくあるわ。

 特に若者が、意味もなく、車や、商店を壊すような行為。

 社会に対する不満を表明したいするために行うから、

 誰のものとか、何をとかは関係なく、

 破壊行為自体が目的よ。」


結局、今でも僕の車をやった下手人は知れない。

Eのようなバンダリズムなのか、フィラデルフィアのような物取りだったのか(何かを取られた形跡はない)、個人的な嫌がらせなのか、はわからないままだ。

僕のポロ車には原因不明のまま、安全ガラス約8万円也が再度装着され、後日、全額保険でカバーされたのだった。


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2009/06/17

羽虫の飛び交う・・・(その6)

僕は高さ約2メートル、枚数にして約80枚の牛の生皮の上にたって、Sさんが仔牛の皮をチェックするのを横で見ていた。

Sさんが、重なっている一番上の仔牛の皮を、無造作に素手でつかんでさっとめくったその時だった。

 ざわざわざわざわ・・・・

 ざわざわざわ・・・・

急に光が入ったその瞬間に、皮と皮の間に巣くっていた無数のウジ虫がうごめいたのだ。

が、Sさんの目には虫などまったく目に入らないかのようだった。

「な、裏側には毛が生えている。」

なるほど、めくって裏返った皮を見ると、ホルスタインのような白黒模様の毛がはえている。

「仔牛の方が色が薄いけど、皮としては肌理が細かい。

 比較のためにこっちも見て。」


といって、隣の山の皮をめくった。

 ざわざわざわざわ・・・・

 ざわざわざわ・・・・

「ね。やっぱり仔牛の方がいいでしょ。この下はどうなってるかな。」

 ざわざわざわざわ・・・・

「うん、いいね」

 ざわざわざわざわ・・・・

「うん」

 ざわざわざわざわ・・・・

「いいね」

 ざわざわざわざわ・・・・

「このあたりはまだ品質に問題ないね。

 常温でいいといってもさすがに数カ月するとね、ダメになってくるんだよ。」


Sさんは自分の扱う商品の品質を確認し、僕に「いいでしょ」と説明するあたりは誇らしげにさえ見えた。

羽虫が飛び交おうが、イモムシが動こうが、彼が守るべき品質には関係ないのだ。

僕は最後に事務所に戻ってSさんに言われた言葉を忘れない。

「世の中のブランド・バック好きの女、全員に見せてやりたいね。

 バックだろうか、ブーツだろうが、皮製品はすべてコレから始まる。 

 例外はない。」



おしまい

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2009/06/16

羽虫の飛び交う・・・(その5)

僕は意を決し、Sさんを追って長靴を正体不明の茶色い水たまりに踏み入れた。

パチャ、パチャ・・・

その間も頭上では、無数の羽虫たちが終わりのない旋回を続けている。

ブブゥゥーン

Sさんが手をかけて上ったあたりまで来ると、皮の山の上に立っているSさんが指をさしていった。

「はい。どうせ聞くだろうから、先にココ見て。」

どうやら牛の皮は、生きている間の姿とは反対に毛が生えている側を内側にして折りたたんで重ねるルールのようだった。

積み重なって見えている皮は肉の肌みたいで、本当の生傷のように肉の表面はしっとり濡れている。

そして、しっとりとしたその肉の肌には、一面にポツポツとあまたの黒い点々がびっしり付いている。


だいたい2センチごとについているから、しっとり生傷にまんべんなくゴマ塩を振ったような感じだ。

もっと近づいて見ると黒点は5ミリ程度の細長い棒状に見えた。

「この黒いブツブツはみーんな、虫の卵。

 さっき、常温で外気においておくって説明したよね。

 アメリカから船に積むまでに港においておく間に、こんなふうになるんだ。」


「・・・・・」

「じゃあ、上にあがってきて」

一応軍手をしているものの、このしっとりゴマ塩に手を置くのは、ちょっと、いやかなり怖い。。。

といって、そんなことも言えないし。。。。

僕はなるべく平静を装いながら、肉ゴマ塩が低くなっているところを探して、腹筋を使って手をつかずによじ登った。

「えーっと、こっちの山が、なんていうかなぁ・・・冬に取れたやつ。

 牛の皮っていうのはやっぱり、夏と冬で違っていて、冬の方が栄養を蓄えていて質がいい。

 その代わりフンがついてるけどな。」


「フンがついてる?」

「そう。牛っていうのはさ。冬は寒いから自分のフンの上に座って寝るんだ。」

「へーえ」

「それから・・・あっ、こっちは、仔牛の皮だ。

 ちょっとチェックして見てみるか・・・

 ときどきこうして見ておかないとね・・・」


つづく



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2009/06/15

羽虫の飛び交う・・・(その4)

事務所から倉庫までトラックも通れる屋外の舗装道路を約30メートル。

「こっちこっち!!」

「はい、ちょっと待ってください。」

急いで長靴の一番下まで左足をなんとかねじ込んで続いた。

扉のあいている倉庫からはすでになにやら生まれてこのかた嗅いだことのない、いいようもない独特の生臭い匂いが流れている。

Sさんは倉庫のドアの横に立ってこちらに言う。

「以前にな、Kっていう名前の取引先の課長が来たんだけどな、そいつはここから中に一歩も入れなかったんだ、あっはっはっはは!!」

声は笑っているのに、こころなしか顔はそうでもなく、僕を試しているかのようだ。

僕は促されて、倉庫の入り口から一歩、中に入って思わず息をのんだ。

「・・・・な、なんだ・・・・これは・・・」

小学校の体育館のような大きさの倉庫、その中に高さ3メートルくらいまで重ねてつまれた牛の皮。

倉庫の反対側の窓からの光でシルエットを作り、否応なく僕の目を奪ったのは頭上を飛ぶ虫だった。

牛の生皮の山の上から天井までの空間には、ものすごい数の羽虫が、大小入り乱れて、渦をつくって同時に右まわりにも、左まわりにもブブゥゥーンと何重層もの低音を響かせて、ランダムに旋回をしていた。

「う・・・・」

そして、倉庫の中に剥きだしなっている鉄骨の梁や柱には、古いのものの上に新しいのものが何重にもめぐらされたような隙間のないクモの巣と、そうしたクモの巣にかかった羽虫たち。

「・・・・・」

なにか言おうと思ったが、一言も出ない。

ふと気がつくと倉庫の中では外よりも一層、独特の匂いが強くなったが、頭上の羽虫の大群の方が気になる。

羽虫の飛び交う上を見ながら、Sさんに続いてもっと中に入ろうとした時。

「おい、上ばっかり見てないで、足元にも気をつけろよ!」

Sさんに指さされ、自分の足元を見ると茶色い色の水たまりが迫って来ていた。

水たまりを目でおっていくと、どうやら水源は牛の皮の山から来ている。

「ここの床は滑りやすいからな。」

そういいながら、Sさんは無造作につかつかと皮の山に近づいて、手をかけてひらりと皮の山に飛び乗っていた。

つづく



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2009/06/14

羽虫の飛び交う・・・(その3)

そうこうするうちに目的地に到着。車を止めて降りたSさんの後について、事務所に入る。

「ちょっとその辺にすわっててくれる。今、グッズをとってくるから。」

「はい、了解です。」

と答えて、僕はソファーにすわり、あたり見まわした。

ソファーの横には、いくつか皮革製品のサンプルらしきものがならべてある。

茶色の革の切れはしをつかんで眺めているところに、Sさんが戻ってきた。

「おい、入口に長靴を用意しておいたからな!! 白いやつ。」

「ありがとうございます。」

「あ、今つかんでいるサンプルが、いわゆる普通の『皮』だ。

 そいつを切って縫えば、ブーツでもコードでもなんでもできる。わかるな。」


「はい。」

「せっかくだから、もうちょっと見せてやろう。えーっと・・・」

そういいながら、Sさんは戸棚からビニール袋に入ったものを取り出した。

「こっちのサンプルが染める前のなめした皮、業界で『ウェット・ブルー』って呼ばれるやつだ。」

ウェット・ブルーと呼ばれた切れはしは、濃い群青色がまざったような灰色をしていて、名前のように少し湿っていた。

「染める前?・・・皮製品の茶色っていのは染めてる色なんですか?」

「そうだよ。黒の注文があれば黒に染めるし、茶色なら茶色に染める。

 注文が決まるまでは色が決まんないから、なるべくこのウェット・ブルーで置いておくわけだ。」


「ウェット・ブルーと、生の皮とはなにが違うんですか?」

「生の皮から、ゴミをとって毛を抜いて、皮革としての構造の間につまってる動物由来のコラーゲンを抜いて、その皮革構造をギュッとしっかりかためる・・・これを一言でいうと『なめす』っていうんだけど、金属であるクロムを使ってなめしおわった半製品を『ウェット・ブルー』という・・・」

「へぇー・・・」

「まあ、話は後だ。まず、ネクタイ外して、長靴はいてついてこい。」

ネクタイを外してジャンパーを羽織り、頭にはヘルメット。手に軍手。そして足には防水滑り止め仕様の長靴。

いよいよ、ウェット・ブルーになる前の、生の皮が眠る倉庫に出発。



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2009/06/13

羽虫の飛び交う・・・(その2)

話が皮を剥いだところでちょっと聞いてみた。

「その~、皮をはいだやつは冷凍してもってくるんですか?」

するとSさんはこんなことを言う。

「冷凍!? そんなことしない。常温だ。」

「じょ、常温って・・・」

「だから、皮を剥いだあと、まあちょっと塩とか振ってだな、

パレットの上に重ねておく。

で、それをそのまま常温だ。」


「パレットって、フォークリフトで持ち上げるための板ですよねぇ。」

「ああ。パレットに40枚だ」

「で、そのあとは冷凍しないで、常温・・・。

 パレットに重ねた40枚は、ラップしとくんですか?」

「いや、なんにも包まない。

 基本的に船に乗せる前も、船にのった後も外気にそのまま。」


「・・・・・」

「ま、どういうものかはもうすぐ見れるよ。はっははは・・・」

つづく



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2009/06/12

羽虫の飛び交う・・・(その1)

あるときに用事があって、牛の皮を見にいくことになった。

待ち合わせの駅につくと、現地まで案内してくれるSさんが改札口で待っていてくれた。

「あー、いらっしゃい。じゃあ、いきましょうか。」

Sさんに促され、僕は車の助手席に乗り込んだ。

「初めてなんだよね?」

「はい。」

「じゃあ、ちょっとだけ説明しとくか。」

Sさんはそういって現地に着くまでのしばらくの間、運転しながらこれから見る「牛の皮」について説明してくれた。

「今日はこれから、倉庫に行くから。

で、専用の倉庫だから全部『牛の皮』が重ねてつんである。」


「はい。」

「で、そうだなぁ・・・積んでいるやつはだいたいアメリカから輸入しているんだな。

 アメリカの真ん中では、まあたくさん、牛を飼ってる。

 牛肉用の牛もいれば、ホルスタインみたいな牛乳用とか、

 いろいろな種類があってだな・・・で、それをシカゴに集めて屠殺する。

 どうやってヤルか知ってるか?」 


「ぜんぜん」

「生きてる牛がベルトコンベアーに乗って、順番に隣の部屋から流れてくる。

 そして入ってきたところで、一気にスパッー、とヤルわけだ。」


「うわぁ~・・・・」

「で、次に皮を剥いで、あとは肉にしてわけていくわけだ。」

「へぇー、すごいですね。」

「それで、こうして剥いだ皮を日本にもってきたっていうことだな。」

つづく



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2009/06/11

トルコ・チャイで作る三段バルコニー

夜、カッパドキアのホテルの中をメグミと一緒に歩いていると、オープン・スペースのテーブルで、ガイドのTがチャイを飲んでいた。ここでいうチャイとはもちろんトルコ・チャイである。

ちょうど夕食を終えた後だそうで、Tはチャイのグラスを片手で持ちながらこう聞いてくれた。

「トルコでは、食後にはチャイがなければなりません。

 あなた方もいりますか?」


「うん。ちょうだい。」

すると、Tは今まで話をしていた男に一声かけ、なにやら合図をした。同席してTと雑談していた男はおそらくホテルの従業員なのだろう。

ほどなくして、男はメグミと僕のためにチャイを2杯もってあらわれた。

デミタスと同じくらいの直径の小ぶりな銀のソーサーの上に、透明なガラスのみでできた独特のくびれたグラスが載せられ、その中にチャイが8分目まで入っている。

「さあ、どうぞ」

Tはまるで、自分が用意したようにチャイを勧めた。

「えーと、砂糖はどうしようかな?」

ソーサー手前のミニスプーン上にある二つの角砂糖を見ながら迷っているとメグミが言った。

「最初から十分入ってて甘いよ。昨日のランチのチャイもそうだった。」

「うん、そうだね」

まず、そのまま飲んでみる。

熱い。それに味が濃くて、しかも、かなり甘い。

不思議なことに、日本にいるときにはこんな甘い紅茶を飲んだりしないのだが、ここトルコにいるとこの甘さがうれしく感じてしまう。

Tがこういった。

「ワタシは、いつも砂糖を2つ入れマース」

トルコ・チャイは、煮出し紅茶である。

日本の標準的な紅茶からすると濃すぎて苦いものをベースにしており、最初から砂糖を入れることを前提にしている。(日本にあるトルコ・レストランではしばしば砂糖無しのストレートでチャイが出てくるが、現地では最初からかなり甘い状態で出てくる。)

と同時に、甘さの調整は飲む人が個人の好みでやることになっている。

ルールのように書くとこんな感じだ。

 手順1. 砂糖を1つ入れて、かき混ぜる

 手順2. 味見をする

 手順3. そんなに味は変わらないので、1に戻る


ガラスの容器を触ってもわかるが、チャイはたぶん日本の紅茶より温度が高くとても熱い。

温度がとても高いためか、上のような手順1-3を何回繰り返しても、あーら不思議、角砂糖はすべて溶けてしまう。

僕はTの勧めに従って、小さなチャイグラスに角砂糖2つを入れてかき回して飲んだ。

お茶としての飲む量がとても少ないのに、苦みも甘さもとても濃く、何かのエキスを吸っているような感じだ。

メグミは砂糖1つを入れたチャイを飲みながら言った。

「これを毎食後に飲んだら、絶対太るわね」

するとTがこう答えた。

「それをチャイ腹といいマース。

 トルコでは

 『チャイ腹のない男は、バルコニーのないマンションみたいなものだ』

 という言葉もあります。」


なるほど、イスラム圏だから酒はないし、男たちは食後にチャイ、集まってはチャイ、でチャイ腹になるわけか。

そう考えながら、思い出して見れば、Tと一緒になってこの旅行をアレンジしてくれている運転手のF氏はかなり立派なチャイ腹だ。

うん、Tはまだ若いからはチャイ腹ではないが、F氏は立派な三段バルコニー付き。



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2009/06/10

高級ホテルで煮炊きをするインド人(その4)

そういう経緯でその日の昼は、インド人Vはホテルで自炊(?)したカレーを一人で食い、僕はデンマーク人Bのみをランチに連れていった。

ランチから帰ってくると、再び彼らとの会議の続きを夕方までした。

さて、一日の仕事を終えるころ、僕はなんとなくインド人Vに聞いてみた。

「Vは今日のディナーはどうするの?」

「今日はもう食べない。」

「は? 食べない? 部屋でカレー作って食べるんじゃないの?」

「いや。今日はもう日が沈んだから食べない。

 日本にいる間は、朝と昼しか食べないことにした。」


まったくもって、何を聞いても予想外の回答しか返ってこない男だ。

「『日本にいる間は』ってどういう意味だ?」

「普段に家にいるときには夜も食べてる。

 その代わり、普段は朝は食べずに昼と夜のみ食べるんだ。」


ベジタリアンにして、コーヒーも飲まないインド人・・・でも、普段は食べてて日本で食べないっていうのはあまり宗教上の理由とも思えず・・・全くもって意味不明だ。

本来であれば、ディナーを一緒にとるであろうデンマーク人BがVに聞いた。

「じゃあ、お前は夜は何やってんだ? 出かけないのか?」

「部屋でヨガをする。

 昨日も寝る前に1時間半、ロータスのポーズをやっていたんだ。」


この答えにBは、もはや何もかもをあきらめてこうつぶやくしかなかった。

「まったく、なんてヘルシーな男なんだ!!」


おしまい

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2009/06/09

高級ホテルで煮炊きをするインド人(その3)

おいおい。

「今のホテルで火災報知器は大丈夫か?」

するとインド人Jはかなり自信ありげにこう言った。

「ノー・プロブレム。

 俺は日本出張25回目だ。問題ない。

 今のホテルでは部屋の天井の火災感知器の位置がベッドの真上にあることを確認してある。

 こういう場合は、部屋の端にライスクッカーを置く。

 その上で、バスルームの換気扇もまわしてやるとオーケーだ。」


「じゃあ、オーストラリアのときはなんで鳴ったんだ?」

「火災検知器が部屋のどこにあるのか、よくわからなかったんだ。

 日本のホテルは天井を見たらどれが火災検知器かはっきりわかる。

だから問題ない。」


ここで、デンマーク人Bが突っ込みをいれた。

「今も部屋の隅にはライスクッカーがおいてあるってことか?」

「そうだ。」

「じゃあ、今頃ルームサービスに入ってくる人がライスクッカーを見つけてたまげてるな。

 帰ったらメモが残っているんじゃないのか?

 『エクスキューズ・ミー、お客様。

 このお部屋は料理をするようにできておりません。  支配人より』

 ってな。」


「さっきも言ったが日本出張25回目だが、そんなことは一度もない。

全く問題ない。」





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2009/06/08

高級ホテルで煮炊きをするインド人(その2)

インド人Vは涼しい顔をしたままだった。

「ホテルの部屋で料理するなんて、なんでもない。」

「だから、どうやってやるの?」

「昨日、ホテルの周りを歩いてピーマンとか買ってきたから、部屋で洗って切ったりした。」

「それから?」

「ご飯はライスクッカーで炊いた。」

「それって、つまり、あのホテルに泊まるのに、わざわざ家からナイフとか、まな板とか、ライスクッカー(炊飯器)とかを持ってきているってこと?」

「そうだ。」

「カレーのスパイスも?」

「もちろんだ。」

この男、せっかく一泊2万円のホテルを予約してやってるのに、部屋でキャンプしてやがる・・・。

「ご飯はライスクッカーで炊くとして、カレーは何で調理してるの?」

「それもライスクッカーでやる。

 今朝は5時起きたが、ランチを作るのに2時間かかった。」


あきれた男である。

横で聞いていたデンマーク人Bも同感らしく、「ホテルの従業員風」にコメントした。

「エクスキューズ・ミー、お客様。

部屋では料理をなさらないようにお願いします。。。」


すると、インド人vは答えてこういった。

「そうなんだ。

 以前にオーストラリアのホテルでいつものように料理をしていたら、

 火災報知器が鳴ってしまったことがあった。」




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2009/06/07

高級ホテルで煮炊きをするインド人(その1)

日本にやってきたインド人Vと初めてあって握手をしたとき、電話で話しをするよりも数段精悍な印象を受けた。

ウエストがぐっと痩せている。

さて彼と朝から行っていた会議がそろそろ昼近くになったので、僕は彼に尋ねた。

「そろそろお昼ですが、何か食べられないものはありますか?」

「私はベジタリアンです。」

「ああ、そうですか? じゃあ、そういうお店にしましょう。」

といって連れていこうとすると、彼は手を振った。

「いいえ。どこにも行く必要はありません。ここで食べてもいいですか?」

「は? ここで食べる?」

「ホテルでランチを作って持ってきました。」

彼はそういうと、持ってきた鞄の中からビニールに包まれたランチボックスを取り出した。

ええーっ!?

彼は、昨日シンガポールから日本に到着し、昨晩はそれなりの高級ホテルに泊まっている身である。

「その・・・ランチを作ったって、どういうこと?」

僕はまるでキツネに抓まれたような気分である。

「ホテルの部屋で、カレーを作りました。」

彼が泊まっている所は安ホテルでは全くない。1泊2万円の高級ホテルである。

「ホテルの部屋? どうやって?」

つづく



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2009/06/06

カツ丼とガンプラとヘビメタ

あるとき日本にやってきたデンマーク人Bをつれて、ランチにカツ丼屋に連れて行ったことがあった。

日本に来て2-3日もたつと、いわゆる日本食にも飽きてくるだろうし、食わせるなら肉がいいだろうと思ったこともある。

「今日はもっとカジュアルなジャパニーズ・フーズはどう? カツ丼っていうんだけど。」

「いいよ。任せるよ。」

さて、このカツ丼専門店に入ると、カウンターしかないのでデンマーク人Bと並んで丸椅子に座って、各種あるいろいろなバリエーションのカツ丼の説明をするのも面倒なので、

「いろいろなトッピングがあるんだけど、とりあえずベーシックで頼んどくよ」

といって、一番ノーマルな、単なる「カツ丼」を二つ注文した。

店主が注文を受けて、カツを揚げたり、カツ丼専用の鍋に汁を入れて火にかけているのをカウンター越し見ながら、一応料理の説明をしていたのだが、デンマーク人Bはしきり後ろを気にしていた。

僕からの料理の説明が切れたところで、彼は質問してきた。

「一つ聞いていいか?」

「もちろん。何?」

「後ろのあれは何?」

彼の指さす方を見ると、棚があり、

その上にガンダムのプラモデルらしき彩色つきのロボットがずらーーーーと並んでいた。

これは店主の趣味なのだろう。

カツ丼が来て、二人で食べ始めた。

デンマーク人Bは、卵とじのついたカツの一切れを箸を使って頬張りながら、感想をもらした。

「この状況はどう考えても、国にいる俺の家族には伝えられそうもないと思う。」

「どうして?」

「特に俺の母親はデンマークからほとんど出たことがないんだ。

 聞いたことがないこのジャパニーズの料理、カツ丼、だろ。

 加えて、後ろにいるあのロボットたち。

 それに、かかっている音楽はずっとヘビメタだ。

 どうやって説明したらいいんだろう?」



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